第2章 【海水浴!ナンパだホイ!】菊丸英二/夢主
「大丈夫だって、こんなの、なんでもないよん?」
「で、でも、やっぱり痛いですよね・・・?、消毒しないと・・・」
「こんなの唾付けときゃ治るって・・・小宮山、舐めてくれる?」
「なっ、何言ってるんですか!、だめですよ!、バイ菌入っちゃいます!!」
オレの実は本気の冗談を、小宮山は真っ赤な顔で聞き流すと、それから立ち上がり、早く戻りましょう!、そう言ってオレの腕を引く。
えー、もうちょっと、いいじゃん?、そう言いながら引かれるままに連れていかれた波打ち際・・・
それまでの勢いと打って変わってピタリと立ち止まるから、どったの?ってその顔を覗き込むと、小宮山は困った顔でオレを見上げる。
「・・・申し訳ありませんが、あちらまで連れて行ってもらえますか?」
あー、小宮山、カナヅチだかんね、そう言って苦笑いしたオレに、泳げますよ!・・・10メートルくらいですけど、なんて小宮山は頬を膨らませて、だからそれって泳げるって言わないから、そういつものように笑いあう。
小宮山の腰を抱えて海へと足を踏み入れると、ビクッと小宮山が身体を強ばらせる。
怖い?ってその顔を覗き込むと、いいえ、英二くんを信じていますから、そう言って小宮山がオレの腰にしがみつく。
「力抜いてよねん?、絶対、大丈夫だからさ?」
「はい、お願いします。」
こんなオレを、無条件で信じてくれる小宮山の期待に応えたいと本気で思う。
もう傷つけない、何度も心に誓っても、いつも守れないけれど・・・
今度こそ、必ず、傷つけないから・・・
ただでさえ、いままでさんざん傷つけて、他にもたくさん巻き込んできたんだから・・・
そして、きっとこれからも・・・
オレの生い立ちを思ったら、確実に、平穏無事な人生とは行かないだろうから・・・
だから、もう、せめて、女の苦労だけはさせないっ!
そう心に強く誓って青い空を眺める。
英二くん?、そう首を傾げる小宮山に、うんにゃ、いっくよん?、なんて言って、笑顔を向けた。