第1章 【ビターチョコ】菊丸英二/夢主
あ、でも、その前にお母さんに飼っていいかお願いする方が先かな・・・?
多分、いいよって言ってくれるだろうけど、もしダメだったとしても、拾った責任でちゃんとした飼い主を見つけてあげないとだから、どっちにしても必要なことだよね・・・?
そう言えば、いつまでも「仔猫」や「お前」じゃ可哀想・・・
でも飼えないかもしれないのに、名前なんて付けない方がいいかな・・・
でも、仮の名前だから、いいよね・・・?
ネコちゃん・・・名前・・・菊丸くんが拾った・・・
菊丸くんの・・・ネコ・・・
先程の東屋での光景を思い出しながら、そうブツブツ唱えて考えること数秒・・・
ひとつの名前を思いつき、ハッとして顔を上げる。
「決めた!、お前の名前は・・・ネコ丸!」
その瞬間、すっかり寝息を立てていた仔猫が、パチッと目を開けて私の顔を覗き込む。
「・・・ネコ丸・・・?」
「ミャア!」
「気に入った?、ネコ丸って名前・・・」
「ミャア!」
良かった・・・
菊丸くんのネコで、ネコ丸だよ、気に入らないはずないよね・・・?
バクバクと激しく脈打つ心臓・・・
本当に・・・また、こんな気持ちに、なるなんて・・・
もう、誰かを好きになることなんて、二度とないと思ってた・・・
窓辺から菊丸くんが見上げたように空を眺める。
何度も頭の中て繰り返す、菊丸くんの笑顔と寂しそうな瞳・・・
彼は、どうして、あんな目をするんだろう・・・?
菊丸、英二くん・・・、そっと小さい声でその名前を呟いた。
「お母さん、お願い・・・ネコ、拾っちゃって・・・どうしても飼いたいの・・・」
仕事から帰ったお母さんを玄関で出迎えると、すぐにネコ丸を飼いたいとお願いする。
面倒は私がみるし、必要なものも全部お小遣いで買うし・・・足りなかったらバイトして稼ぐから、そう必死に頼み込む私に、唖然とした様子で驚いていたお母さんだったけど、璃音のおねだり、久しぶりね、そう言ってすぐにクスクス笑いだした。