第1章 【ビターチョコ】菊丸英二/夢主
「ただいま、ネコ丸!」
自宅に帰るとメガネを外して髪をほどき、やっと嘘で固めた仮面を外す。
ミャア!と元気に駆け寄ってくる可愛い仔猫。
あの日、菊丸くんが公園の東屋で助けたのを目撃して、衝動的に連れ帰ってしまった。
菊丸くんのタオルはもう泥だらけになってしまっていて、すぐに洗えば落ちるよね?、そうすぐに洗濯して、そのまま暴れる仔猫もシャワーで洗ってあげた。
「痛い!、痛いったら!、お願い、大人しくして?」
あっちこっち引っかかれて、噛みつかれながら、なんとか洗ってふかふかのタオルで拭いてあげると、そこから飛び出してきたのは、すっかり綺麗になってますます可愛くなった仔猫・・・
本当に可愛い!、思わずギュッと抱きしめる。
「こんなに暴れるんじゃ、ドライヤーは無理かな・・・」
前もって暖めておいた自室に連れていくと、暴れ続ける仔猫はすっかり怯えてしまったようで、あんなに人懐っこかった様子は微塵も感じられず、あっという間に部屋の隅へと逃げ込んでしまった。
必死に身体を舐めながら、私の方を警戒するその様子に、そんなに怖がらないでよ?、そう言ってそっと腕を伸ばす。
しばらく、警戒したまま私の指の匂いを嗅いでいたその仔猫は、ペロッと指を舐めて、それからぐりぐりと頬ずりをした。
「・・・よしよし、いい子ね・・・お前、私の友達になってくれる・・・?」
窓辺のいつもの場所に腰を下ろすと、膝の上で仔猫がゴロゴロと喉を鳴らして寝息を立て始める。
いいってことだよね?、そう勝手に判断して、膝の上の仔猫を撫でる。
「そうだ、お前、お腹すいてない?、菊丸くんからお菓子は貰ってたみたいだけど、ちゃんとした猫用のご飯じゃなきゃ、ダメだよね?」
あと、トイレと・・・何が必要だろ・・・?
とにかくペットショップにいって色々教えてもらわなくちゃ・・・
それに動物病院にも連れて行って健康診断してもらわないとだよね・・・?