第2章 【海水浴!ナンパだホイ!】菊丸英二/夢主
「・・・じゃあ、英二くんもあの女の人たちと、エッチなことしようと思っていたんですね?」
そんなつもり無かったのに、ポロリと涙がこぼれ落ちた。
私のその涙と言葉に、英二くんが顔を固まらせた。
「私と約束してたビーチバレーもスイカ割りも、英二くんはあの女の人たちと一緒に楽しんだのに、どうして私だけが責められないといけないんですか?」
気がつくと、もうナンパしてきた男の人はいなくなっていて、周りに集まっていた野次馬の人たちも気まずそうに離れて行っていて、でも、英二くんを責める言葉は止まらなくて・・・
どうしてせっかくのデートなのに、初めての海水浴なのに、喧嘩なんかしないといけないの・・・?
「・・・ご、ごめん、小宮山、オレ・・・」
数歩、歩み寄る英二くんの手を振り払った。
さっきの女の人たちのところに戻ればいいじゃないですか、そう言って背を向けた。
せっかく、英二くんが謝ってくれたのに、素直に私も謝ればいいのに・・・
いつもは簡単に出来るのに、どうして、今日は謝る気になれないの・・・?
「・・・頭、冷やしてきます。」
振り返らず、そのまま歩き出した。
英二くん、今、どんな顔してるんだろう・・・
困ってるかな・・・呆れてるかもしれない・・・
それとも、怒ってるかもしれない・・・
もし本当に、あの女の人たちのところに行っちゃったら、どうしよう・・・
こんなに不安になるくらいなら、女の人たちのことなんて口にしなければ良かったのに・・・
不安で押しつぶされそうになりながら、人混みをかき分けどんどんと進んでいく。
砂浜が終わり、波打ち際で立ち止まる。
そっと振り向いてみたけれど、英二くんは追ってきてはくれなくて・・・
やっぱり、怒ってるんだよね・・・
ザブンと寄せる波が足を飲み込み、砂と一緒に返って行く・・・
はぁ・・・、溢れるため息がその波の音にかき消された。