第2章 【海水浴!ナンパだホイ!】菊丸英二/夢主
「ねぇ、さっきの彼氏?、酷いねー、ずっと放ったらかしじゃん!」
足の指先のネイルをなぞりながら必死に涙を堪えていると、誰かに声を掛けられ顔を上げる。
それは、いかにもナンパ目的で海に来てます、って感じの男の人・・・
明るい派手な髪色と、ジャラジャラと付けているアクセサリー・・・
アクセサリーなら英二くんも、このお揃いのブレスレットとスイカの形のネックレスを付けていたけど。
可哀想ー、泣いてんじゃん、なんて言って男が手を伸ばしてくるから、ピシャリとその手を払い除ける。
「泣いてなんかいません、あっちに行ってください。」
あとは何を言われても相手にしなければ、すぐに別のターゲットのところに行ってくれる。
いつもナンパされた時のように、そう無視を決め込むつもりだった。
本当に、無視するつもりだったのに・・・
「んなこといわないでさ?、彼氏、アンタが寝てんのいいことに、またあの女たちとよろしくやってんぜ?」
その言葉に、ズキンと心臓が痛んだ。
そんなこと、言われなくたってわかってるもの・・・
でも、待っててって、すぐ帰ってくるって、言ってくれたもの・・・
「ありゃ、当分、戻ってこないね、すんげー盛り上がってっから。きっとあんた、先帰れとか言われるのがオチだぜ?」
そんなこと、英二くん、言わないもの・・・
私、ちゃんと、信じてるもの・・・
「彼氏だって好き勝手やってんだからさ、こっちはこっちで楽しもうぜ?、とりあえず海の家でかき氷でも奢ってやるからさ?」
かき氷・・・?、ゆっくりと顔を上げてその男の顔を眺めた。
お、食べる?かき氷、その言葉に、小さく頷いて立ち上がった。
別に、かき氷が食べたかったわけじゃない・・・
でも、このナンパ男に着いていくことで、ちょっとだけ英二くんに腹いせしたかったのかもしれない・・・
「かき氷、だけ、食べます。」
そう、かき氷だけ・・・
別に、一緒に海の家にいって、食べてすぐに帰ってくるだけだもん・・・
そう、自分に言い訳しながら歩き出した。