第1章 上
身体がふわりと浮いて、足につけられた鎖の音がジャラジャラと響く。その音で、ぼんやりと目を開けると、目の前にカラ松の顔があった。
「起こしてしまったか」
見下ろしてくるその顔は、申し訳なさそうに眉が下がっている。どうやら私をベッドまで運んでくれようとしていたらしい。
そう思ったら、なんだか無性に嬉しくなってきて、先程まで考えていたことなど、どこかへ吹き飛んでしまった。
「カラ松さん・・・おかえりなさい」
私はカラ松の逞しい胸に顔をすり寄せた。
「ただいま。遅くなってすまなかったな」
頭の上から優しい声とキスが降ってきて、うっとりとしているうちにベッドに到着していた。
ベッドに下ろされると同時に、カラ松の腕が離れていく。私は思わず、その腕に縋りついてしまった。
「やだ、行かないで。一緒に寝ましょう」
「えっ、いや、しかし、が作ってくれた夕食を食べないと・・・」
子どものようにしがみついてきた私に、カラ松は少し驚いたような顔をしている。
「行っちゃイヤです」
眠気のあまり、私の理性は半分ほどどこかに飛んでいってしまったらしい。
困った顔をしている彼に構うことなく、ぶんぶんっ、と頭を振れば、もうカラ松の表情はデレデレに溶けていた。
「仕方がないな・・・」
そう呟いてから、ばふっと、セミダブルのベッドに寝転がってきたカラ松に、力強く抱き寄せられた。
「、愛しているよ」
耳元で甘く囁かれて、思わず「私も」と言おうとして、ハタと口を閉じた。
左足につながれた鎖の音が聞こえたからだ。