第4章 おまけ
嬉しそうに指で「バーン」をするカラ松の得意気なドヤ顔に私は思わずソファからずり落ちそうになったが、目の前に置かれたローテーブルに手をついたおかげで何とか落下は免がれた。
手をついたローテーブル。きっとこのテーブルで作ったに違いないと思うと、ニヤニヤと頬が緩んでいってしまう。
広い背中を小さく縮こまらせて、せっせと婚姻届で折り紙をしている姿をはっきりと思い浮かべた時、思わず吹き出してしまった。
「もう、もっと早く来てくださいよ」
少し呆れたような口調で言って、婚姻届の用紙を折って作られたバラの花束を見つめる。
「これじゃ書けないじゃないですか」
「大丈夫だぁ~!提出用も用意している。書き損じてしまった時のことも考えて、予備も10枚ほど作ってあるぞ」
まるで手品のようにパッと現れた婚姻届の束。
その全てに、カラ松の丁寧な文字が記入されているのが見えて、私はカラ松というこの人物の面白さを再認識するような気持ちがした。
「紙使いすぎですから。役所の人に殴られますよ」
私は花束の中から一本を抜き出すと、チュッと軽く口づけて、白と茶色のまだら模様のハートを飛ばした。
それをカラ松が大きな口を開けてパクリと捕らえると、ごっくんと飲み干す。
本当になんて幸せな生活だ。
この人は、欲しいものを手に入れるためならば手段を選ばない。だけど、こんなふうに強引に奪われるのも、悪くないかもしれない。
~Fin~