第3章 下
「何か、大団円みたいだよ?」
車で駆けつけた時には、すでに二人が熱い抱擁を交わしているところだった。
その様子を目の当たりにして、隣でガックリと膝をついている中村くんの肩に俺はポンと軽く手を置く。
「あの二人、本当に好き合っているみたいだね」
その言葉は、今の彼にとっては何よりも聞きたくない言葉だってことは分かっている。だけど、彼のためにもここはきっちりとトドメを刺してやらなきゃいけないと思うんだ。
決してクソ松のためじゃない。この純情な青年と、あそこで嬉しそうに泣いている彼女のためにするんだからな。
そんな俺の気持ちが伝わったのか、中村くんはゆっくりと顔を上げて、半べそみたいな顔をぐっと力ませて笑った。
それはお世辞にも男らしいとは言えない顔だったけれど、俺はこんなにカッコイイ奴を見たことはない。
「自分、フラれちゃいました」
中村くん、君は男だ。君は今最高に漢らしい。
「元気、出しなよ」
こくんと小さく頷いた頭を、俺は友達の猫にやるみたいにしてワシャワシャと撫で回してやった。