第3章 下
長い間外出せずに室内だけで暮らしていたせいで、私の体力は思った以上に衰えていた。
ほんの数分しか走っていないというのに、もう足が重い。呼吸が苦しくて、胸が裂けてしまいそうだ。
だけど立ち止まりたくない。今すぐカラ松に会いたい。私の足よ、どうか動いて。
しかしその強い思いとは裏腹に、とっくに全盛期を過ぎて後は徐々に衰えていくだけという私の脆弱な身体は、何の段差もないところでつまづいた。
傾いていく身体に、近づいてくる地面。
何とか体勢を整えようとしたけれど、間に合いそうにない。
ぶつかる、と固く目を閉じた時、強い力で包み込まれるようにして、ふわりと身体が浮いた。
恐る恐る目を開いてみて、誰かに抱きとめられていることに気がついた。
「大丈夫かい、ハニー」
目の前で笑ったその顔は、クソタンクトップにプリントされたあのクソ顔とそっくり同じだった。