第2章 中
当然のことながら、俺はカラ松に問いただした。一体どういう事なのか30文字以内で完結に述べよ、と。それなのに奴ときたら、
「天から舞い降りた俺のヴィーナスだ」
などとのたまうものだから、思わずその得意げに笑みを浮かべる顔の真ん中に鎮座した形の良い鼻の穴に指を突っ込んで、背負い投げをしてやった。
派手な音を立てて床に倒れふしたそいつを見た彼女が、ちょっと驚くくらいビックリした顔をして駆け寄っていったものだから、逆に俺のほうが戸惑ってしまった。
大丈夫ですかカラ松さん、と奴の頭をその柔らかそうな膝に乗せてやっている彼女に、恐る恐る俺は声をかけた。あまりにも急な展開に、ズボンの隙間からしっぽが飛び出しちゃってるけど、彼女のいる角度からは見えないはずだし大丈夫。
「えー、えーっと、あの、聞いてもいいですか?」
俺が声をかけると、その小さな顔がくるりとこちらを向いた。もう一度写真と見比べてみて、俺は確信する。
「貴女は赤塚図書館の職員ですよね?現在休職しているはずですが、それが何故、こんなところにいるのですか?同僚の中村さんから私の方に搜索の依頼がありました」
突然休職した同僚の様子に不審な点があるから調べて欲しいと、そう言ってうちの事務所の扉が叩かれたのはほんの数日前の事だった。