第1章 上
次に目を覚ましたのは、カラ松の部屋のソファの上だった。
「・・・!?」
見慣れない天井、自分の家のものではないと一瞬で分かるほど上質な柔らかさ、ほのかに香ってくる爽やかな香り。
慌てて身体を起こすと、ローテーブルを挟んだ向こう側に、カラ松が座っていた。
「気分はどうですか?すみません、ご自宅に送ろうと思ったのですが、住所を聞く前に眠ってしまわれたので、一旦僕の部屋にお連れしてしまいました」
「申し訳ありませんっ!私、とんだご迷惑を・・・」
「いえ、迷惑だなんて。逆に、いいものを見せてもらいました」
「え?」
「寝顔、可愛かったですよ」
「っ・・・!!」
すっ、とカラ松は立ち上がると、流れるような仕草で私の隣に腰掛けた。
先ほどのスーツのままだが、上着は脱いでネクタイも外している。第一ボタンを外した首筋がチラリと見えて、男の人なのに、なんて色っぽいのだろうか・・・と思ってしまった。
「貴女のことを初めてお見かけした時から、ずっと気になっていたんです。僕とお付き合いしていただけませんか」
まっすぐに見つめられて、そう言われた。何の飾りも無く、本音だけが詰まった言葉に、酔いだけが理由ではない目眩を感じる。
こんな告白もはや反則ではないか。
私に取れる行動など、ただ一つしか残されていなかった。
「はい・・・」
こくん、と小さく頷いて、伏せていた目を上げた時、
ガチャリ
と、金属質な音が響いた。