第7章 HATE YOU
試合は、青葉城西の勝利に終わった。
中盤は、烏野が優勢であったが、結局すぐに対策されて捩じ伏せられるような終わりだった。
清水に頼まれたドリンクボトルを洗っていると
「春華」
声をかけられ、振り返る。
『…徹』
腕に、可愛いラッピングの箱やゴディバの袋をいくつも抱えた徹が立っている。
相変わらず、嫌味なほどモテているのだろう。
私も、好きだった時期があったため、言えたことではないが、皆この見た目に騙されているんだろうな。
この笑顔は
私の心を一気に地に叩きつける。
白い肌、細めの眉、自信に満ち溢れたように見える、綺麗すぎる顔にはめ込んだイタヅラっぽい少年のような雰囲気。
全部真逆だ。
私の大好きな大地先輩とは、まるで逆だ。
「春華さぁ、烏野の主将と付き合ってるわけ?」
何が目的かは知らないけれど、聞いてくる内容はやっぱり嫌味っぽい。
徹には絶対関係ないし、付き合ってるとも付き合ってないとも言えない関係だ。答えたくない。
『……』
「付き合ってないのに手作りチョコ?
重いよー?そういうの
まぁ、俺にもそういうのくるけど、買ったものしか食べないし
渡さないですんでよかったね
及川さんに感謝じゃん?」
なんでそんなに酷いことばっかり言えるの?
徹の顔から目をそらし、ドリンクボトルに溜まった水を流していく。
『関係ないし…それに…』
少し視線を持ち上げれば、体育館のドアが見える。
その先にいるのは、大好きな先輩。
ついつい隣に徹が居るのに、ポーッと見つめてしまう。
大地先輩がこっちに気づいた、ニカッとわらって手を振ってくれる。
私も、手を振り返していると、いきなり視界が変わって
徹の方を向かされた。
掴まれた顎が少し痛い