第7章 HATE YOU
一方徹は、やけに機嫌が悪そうに方口角をヒクつかせると
「何…ブスにブスって言ってるだけだから良いでしょ
それに、烏野の主将君にはカンケーないし」
「関係なくもないけどな」
大地先輩はあくまで冷静に言葉を返す。なんだか大人だ…
私は、大地先輩にあげるはずだったチョコバーを徹に食べられた悲しさも、もうすっかり忘れて大地先輩に見とれていた。
春華は、及川の手に握られた箱を奪い返す。
綺麗にラッピングされていたはずなのに、台無しになっていた。
ジワリと涙が出そうになる
頑張ったのにな…先輩に喜んで欲しくて…
本当に渡したかった大地先輩に向き直る
『すみませんでした…
もう、大丈夫なんで……』
無理して笑ったせいか、うまく先輩の方を見れない。
「せっかく来たんだから、清水の手伝いしてやってくれよ、な?」
澤村は、『え…でも』と困惑する春華の手を掴んで烏野側のベンチサイドに引っ張っていった。
今までも何度か清水の手伝いはしたことがある。けれどそれは、あくまで部活の最中で、こう言った他校との試合中には初めてのことだった。
清水は、突然の援軍にとても喜び「ありがとね」と綺麗に笑う。
ホイッスルが鳴ると同時に、澤村は、春華の方を向いて笑いかけた。
春華は、さっきまでの悲しい気持ちが全部吹っ飛んだかのように、あからさまに赤くなって
感情を全く隠さない熱の篭った眼差しで澤村を見つめた。
そんな春華を、ネットを挟んで見つめるモカ色の瞳。
「なんなの…アレ
すっごくイラつくんだけど」
「いいから、集中しろ」
岩泉に注意されると「ハイハイ」と言いながら殺人サーブを繰り出した。
いつもより殺傷能力が高いのは、イラつきのせいなのだろうか。