第7章 HATE YOU
それにしても…
明日の日付が2/14日じゃなければ、今回の親善試合はパスしたいところではあった。
『青葉…城西か』
その名前をつぶやくだけで、思い出したくもない男の顔が浮かんでくる。
コート上の大王様…ってピッタリすぎる二つ名で、同じクラスの日向くんが呼んでいたっけ…
及川徹…
私の元カレだ。
中二の4月まで、約1年付き合っていた…
別れてまだ二年経っていないとか、信じられない。
別れた理由は、最悪だった
「えー?春華?ないない
胸大きいから付き合ってるだけだよー」
金田一と国見に、笑いながらそう話してるのをたまたま立ち聞いてしまって。
あの時は…それなりに好きだったし、初めての彼氏だったから
すごく傷ついて、その場で大泣きして別れたんだっけ…。
国見に宥めてもらって、一緒に帰った記憶が蘇る。
あんな辛い思いをしたけれど、高校は別の所を受けたし。
それに私は、烏野で大地先輩と出会って、すぐに一目惚れをしたから、今ではもう笑い話だ。
笑えはしないけれど、私の中で充分『過去』の話になっている。
そんなことより、明日のバレンタインチョコレートだ。
今から帰って作る予定。
ドライフルーツとナッツがたっぷりのチョコレートバー。
さっと食べれて、すぐにエネルギーになるから、試合前に渡すんだ。
受け取った時の笑顔が容易に想像出来てニヤついてしまう。
大地先輩は優しい、本当に優しくて、一緒にいるだけで胸がいっぱい幸せに満たされる。
私は大地先輩の彼女じゃない。
でも、好きですって言ったら、俺も好きだよって言ってくれる。
抱きしめたら、抱きしめ返してくれる。
キスだって、その先だって、もう経験済みだ。
大地先輩は、主将だし
今は大事な時だから、色々言えないこともある
『私って、彼女なんですか?』
『私だけのこと、好きでいてくれますか?』
気にならないって言ったら嘘になるけれど。
別に、今は彼女じゃなくてもいい。
求めてくれるだけで、十分だ。
だって、私は大地先輩が…大好きなんだから。