第6章 素直なキモチ
チラホラと体育館にはもう選手が集まっていて、
体育館の入口には何人か及川さんのファンが溜まっていた。
すいません、と間を縫うようにして体育館にたどり着く。
こんなにファンが多い青城バレーボール部のマネージャーになれたのは
及川さんになんの興味も抱かないからだ。
ボールの気圧を確認しながら、選手の状態を確かめる。
ふと先程までの会話を思い出す。
「春華って、マネージャーだけど本命いないの?」
ブンブンと頭を振って邪な感情を振り出す。
さっき、言った通りそんな不純な動機で部活してる訳じゃない。
サポートしたいと思ったし、バレーが好きだからこの部活に入ったのだ。
確かにバレーをしてる選手達をカッコいいとは思うけど、
そこに恋愛感情はない。
再度、頭を振り、さ、部活部活!と心で念じる。
国「なにやってんの、お前」
春華「国見……。
いや、ちょっと考え事してて」
国「テスト、そんなにやばかったの?
俺が教えてやろっか」
春華「いや!そうじゃなくて!別の、色々……?」
国「色々ってなんだよ」
春華「色々は色々だよ。
そんな事、いいからハイ!」
金田一がきたのをいい事にボールを投げ渡し
早々に会話を切り上げた。
国「そんなに追求されたくないの…?」
興味なさげな瞳に少しだけ光が指す。
国「どうせ、明日どうやって渡そうとか、そんなとこでしょ」
悪戯に笑う小悪魔様。
春華「何言ってんの、ほら、パスしてきなって」
意味深に笑って、金田一を連れて選手達の中へ混ざっていく。
1つだけ慣れないものがあったことを思い出す。
春華「あんな風に笑うんだもんね」
無気力で、あまり表情の変わらない彼の見せる不意の笑顔。
アレだけは何度観ても慣れない唯一のもの。
雪ちゃん、ごめん、ちょっと不純な動機、
あったかもしれません……。