第2章 チョコレート・パニック
実際オレは、自分の目で、自分の目の前で、アイツが誰かに想いを告げるのを見るのが···嫌なんだ。
小さな頃から研磨とずっと一緒に過ごして来て、このまま誰のところにも行かないと、なぜ···そう思っていたんだろう。
オレのそばにいろよ。
そんなひと言さえ、言えないのに。
「戻るか···」
ひとり呟き、メモをポケットに押し込みながら教室へ続く廊下を歩き出した。
最後の授業のチャイムが鳴り、ザワつく教室でため息を吐く。
遂に、この時間になっちまったか。
身の回りを片付け、雑にカバンを引っ掴み廊下に出る。
さて···ひと仕事、して来ますかね。
メモに書かれた場所を思い浮かべ、歩き出す。
告白されたのを断るなんか、今まで何度だって経験して来た。
別に、女に興味がないワケじゃない。
ただ、アイツ以外には興味がないだけだ。
でもそのアイツも、もしかしたらどこの馬の骨だかわからんヤツにかっ攫われてしまうかも知れないけどな。
指示された場所に近付くにつれて、次第に足が重くなる。
まさか、アレだよな?
誰かのイタズラとかじゃないよな?
だったら、いっそ行くのやめるか?
行かなくていい理由を片っ端から並べては、ひとつずつ消していく。
アホか、オレ。
ここまで来といて、何を怖気付いてんだか。
ま、行くだけ行ってみっか。
自嘲を懐に仕舞い込み、さっきより幾らか歩幅を広げて先を急いだ。
あの角を曲がれば、指定された···
「あれ?何してんだよ夜久」
夜「クロ?お前こそ···」
校舎の角を曲がりかけた時、思わぬ人物と鉢合わせた。
夜「お前、放課後は用があるからって言ってなかったか?」
「それはそうだけど···」
だからオレは夜久に、アイツを見届けてくれって頼んだハズなんだが?
「もしかして?」
それだけ言うと、夜久が小さく指をさしてひとつ頷く。
夜「さっきあの場所に着いてから、春華ちゃんは誰かを待ってるんだよ。ちなみにリエーフはアッチ」
夜久が今度は上をそっと指差し、オレもその方向に目をやれば、リエーフが3階の窓からジッと春華に視線を送っている。
あいつはストーカーかよ···
しかし、どうしたもんかねぇ。
このままじゃ、オレを呼び出した相手と鉢合わせちまうよな。
それに···