第2章 チョコレート・パニック
ポケットで存在を示すスマホを覗きみれば、夜久からたったひと言···クロ、ばーか!のメッセージ。
分かってるって、しくじったなってオレだって思ったんだから。
「まだ、渡してない···」
「あ?」
「だから、まだ渡してないよ···本命チョコ。放課後に···渡す、つもり」
「あっ···そ、う」
「用事そんだけ?私、忙しいから行くね!」
「あ、おい!」
呼び止めたのも聞かず、春華は制服のスカートをヒラヒラさせながら駆けて行った。
放課後···か。
どうする、オレ。
何気なくポケットから取り出す、一枚のメモ。
午前中の体育の授業が終わり校庭から戻った下駄箱に入ってた。
《 放課後、部活の前に少しだけ時間を下さい。第3校舎の裏で待ってます 》
行くべきか、それとも行かずにいるべきか。
行ったところで、そこで何があるのか見当はつく。
だが···すっぽかしっていうのも、後々を考えたらよくないだろう。
幸い、春華の行動をチェックする役目はオレ以外にも二人いる。
どうすべきかギリギリまで迷いながらも、オレはスマホを開いて···名前を指で探し出した。
「あ、オレオレ。頼みがあんだけど···」
夜「つうか、クロ!お前さっきやらかしただろ!」
···すんません。
「まぁ、いいじゃないの。オレの失敗より春華のこれからの行動が分かったんだからさ?」
夜「で、オレに頼みって?」
「···放課後、春華が相手を呼び出してるっぽい」
夜「マジか?!···オレの淡い期待は崩れた···」
「あ?何言ってんだ?」
夜「オレ···呼び出されてねぇ···」
···あ、そういう事?
「ま、それはご愁傷様ってコトで。んで、頼みってのはさ、オレ···その現場に行けないから、見届けてくれ」
夜「なんでだよ。最後の最後を覗き見ないとか、どんだけの用事だよ」
言うと思った。
「実はオレ、野暮用があって行けない」
夜「くぁぁぁ~!リア充爆発しろ!」
···切られた。
事の詳細を説明しようとしたのに、それも聞かずにいきなり通話切るとか。
でも、根掘り葉掘り聞かれたところで、満足のいく説明が出来るかっていや、そうでもない事にちょっとホッとしてる自分がいるのも否定は出来ない。
逃げ、と言われたらそうなのかもな。