第2章 チョコレート・パニック
バレるワケにはいかない、バレたら全てが終わる。
作戦を最後まで遂行して、相手がどんなヤツなのかは見極めねぇとな。
見極めて···その後はどうする?
もし、オレの知ってるヤツだったら。
身近にいる、ヤツだったら?
そん時オレは、どうするんだ?
「ねぇ、クロ?」
「あ?」
「私に用事があったんじゃないの?部活で急ぎの用事とか?」
そうだ、春華を呼び止めたのはオレだ。
「いや、そうじゃない」
まさか足止めしたいからだ、なんて言えるワケもない。
何か適当に流して···なんて思って、春華がオレをまたクロと呼び、ふと思いつく。
「そういやお前さ、なんで学校の時はそう呼ぶんだ?」
「なにが?」
「だから、オレを呼ぶ時の話だっての」
「呼び方?だって、クロはクロじゃん?研磨だってずっとクロって呼んでるし」
いやまぁ、そう言われっと···そうなんだけどな?
「研磨は良くて、私はダメなの?」
「そうじゃねぇけどよ、前の呼ばれ方の方がしっくりくるっていうか」
お前しか、その呼び方しねぇって···いうか。
「前の、って。だって、私がそんな呼び方してたら、クロの彼女に悪いじゃん?」
「はい?オレに彼女なんて、いませんけど?」
突然降って湧いた発言に間の抜けた返しをしてしまう。
「だからさ?この先クロに彼女が出来たら悪いじゃん?ってこと。彼女が出来てから呼び方直すのも変かな?って思ったから」
「そんなん別に良くね?関係ないだろ」
それに、そいつが前のお前みたいな呼び方するとは限らねぇし。
そもそも、彼女···いらねぇし。
···お前がそばにいれば。
「自分、は?お前に彼氏が出来たら、それこそオレら全員呼び方考えなきゃ行けねぇだろ?」
「私は別に···」
本当は、お前に彼氏が出来るとか考えたくねぇけど。
話の流れでそんな事を言ってしまった自分を呪う。
「だいたい今日だってバレンタインだろ?みんながソワソワしてるし。今年はお前、本命にしかあげないんだろ?もう渡したのか?」
言ってしまってから、しまった···と後悔する。
「な、んで?なんでクロが知ってるの?!」
「いや、まぁ、リエーフが泣いて騒いでたからな。で?どうだったんだよ、結果は」
ヤバいと思いながらも、聴取が止まらない。