【YOI・男主×ユーリ】扉の向こうとこちらのエロス
第4章 エピローグ
その後。
国別対抗戦に選ばれなかった礼之は、自身の練習や学校の都合で現地に行く事も叶わず、開催中はTV観戦に徹していた。
しかしその分、可能な限り互いに共有できる時間を持とうとまめにユーリと連絡を取るよう心掛けた。
日々の何気ないメールは勿論、時差と時間の許す限りは、ネット越しだが愛しい恋人との逢瀬を楽しむ。
(きっと、僕が積極的になった方が良い。ユリは意地っ張りだしね)
彼と色々な事を話し合い、そして笑い、時には喧嘩もしながら、始まったばかりの2人の関係を育んでいった。
夏休みをエスポーで過ごしていた礼之の元へ、「ピーテル郊外に親戚のダーチャがあるから、お前も遊びに来いよ」とユーリから誘いが来た。
高速鉄道でヘルシンキからピーテルに到着すると、予めユーリに教わっていたバスに乗り換え、移動を続ける。
徐々に街の喧騒から遠ざかっていく風景を窓越しに眺めながら、礼之はユーリに時間通りのバスに乗った事を知らせるついでに、招待されたダーチャについてメールで尋ねた。
『ダーチャつっても、昔の古めかしいタイプじゃなくて、普通にライフラインは整ってるから、安心しろ』
『僕の地元にあるコテージみたいな感じだね。ユリのご親戚って、どんな方?』
『今、持ち主はバカンスに出かけてるから、俺だけだ』
「え…?」
ユーリからの返事を目にした礼之は、思わず車中なのも忘れて声を上げる。
『その間、ダーチャの留守番を頼まれた。だから、滞在中は俺とお前の2人きりだ』
重ねて届いたメールに、礼之の鼓動は一気に跳ね上がる。
『…それは、どういう意味?』
騒ぎ始めた胸の鼓動を抑えつつ、礼之は既に答えが判り切った問いを、ユーリに投げかけてみる。
『お前も判ってるだろ』
『ユリは良いの?これから2人きりで過ごすなら、僕は自分を抑える自信はないよ』
『何でそんな必要があるんだ?』
微かに震える手で返事を打ちながら、ユーリは礼之のストールを身体にかけ直した。
あれから何度か洗濯をしたが、今でも羽織ると彼の薫りに包まれているような気分になる。
歳下の癖にちょっと生意気で頑固で、だけど優しくて誠実な『サムライ』に、ユーリの心は射抜かれた。
離れ離れでたまに不安に苛まれそうになった時には、必ず連絡を寄こしてくれる。