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【YOI・男主×ユーリ】扉の向こうとこちらのエロス

第4章 エピローグ


『悪い、ちょっと濡らしちまった』
『飛行機の良い防寒対策になってる。ちゃんと洗って返すから』
機内のWi-Fi経由で寄越してきた2通のメールと、少し時間を置いた後に送信された日本語での新たなメッセージに、礼之は思い切り眉間に皺を寄せた。
『さみしい』
英語や母国語ではない分、ユーリの心情がダイレクトに伝わる4文字を目にした瞬間、礼之はあのような別れ方をした事を猛烈に後悔した。
返事を出す暇がないままその場はリンクに上がったものの、礼之の滑りはいつもの精細さを欠いており、それを瞬時に見抜いたコーチから、口調は穏やかだが容赦ないダメ出しをされるに至ったのだ。
意地っ張りの恋人の様子を想像しながらため息を吐くと、礼之は返事を打つ。
内心世話が焼けると思うけれど、そんなユーリを好きになったのは、他でもない自分なのだ。
(この想いは、僕とユリだけのもの。スケートと同じく大事に、そして着実に育んでいくんだ)
スマホの電源を落とした礼之は、屹然と顔を上げると再びリンクへと戻った。

フラットシートで眠っていたユーリは、傍らのスマホが振動するのを覚えると、目を開けてディスプレイを確認した。
『二度とあんな別れ方しないで。ユリにハグもキスもできなくて、僕だって寂しかった』
『好きなだけ涙も鼻水も拭いていいから。次に会った時は、ユリが望むだけ抱き締めてキスしてあげる。嫌だと言っても、僕はするけどね』
『そっちに着いた頃にでもまた連絡するよ。ユリも練習頑張って』
「鼻水は垂らしてねぇよ」
気持ちが弱っていてつい日本語で本音を漏らしてしまったが、素直な返事を寄こして来た礼之にユーリが薄っすらと口元を綻ばせていると、新たなメッセージが文字とボイスで飛び込んでくる。
『愛してるよ』
単純だが、そこにこめられた想いの強さを、今のユーリは身をもって知っている。
「バカ…ンな大切な事、軽々しく口にすんな」
か細く呟くが、自分が一番望んでいた言葉をくれた礼之に、ユーリの胸には、先程まで感じていた痛みとは違う甘い疼きが滲んできた。
「もう…お前の家族と、俺以外に言ったらダメだからな」
首元に巻いたストールから仄かに薫る礼之の匂いに安堵の息を吐いたユーリは、スマホを胸元に抱き締めると再度目を閉じた。
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