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【YOI・男主×ユーリ】扉の向こうとこちらのエロス

第4章 エピローグ


「…どうしてもここで?」
「どうしても。するのかしないのか、どっちだ。まあ、するまで俺はここを一歩も動かないけどな」
カザフの友人の口調を真似つつ、ユーリが詰め寄るのとは対照的に、礼之は益々困惑した顔をする。
少しの間、口中でブツブツと呟いていた礼之だったが、やがて何かを決意したかのように顔を上げると、
「貸して」
ユーリの胸ポケットから取り出した彼のサングラスをかけると、更に反対の手で襟元から外したストールを、極力その姿を隠すようにユーリの首に巻き付けながら、歩を進める。
「僕がこんな真似するのは、ユリの頼みだからだよ」
心なしか早口で呟いた後で、ユーリの唇から口腔へと礼之の舌が侵入してきた。
ユーリが軽く声を漏らすと、擦り合わせた口の粘膜だけでなく、背に回された礼之の腕が、更にきつく絡んでくる。
思いの外濃厚な口づけになったしまった後、我に返った礼之は、少しだけ慌てたように唇を離したが、ユーリは口元を拭いながら、笑い声を漏らした。
「確かにキスしろとは言ったけど、フレンチ・キスや頬へのキスでも良かったんだぞ?」
「え?」
「それにお前、キスする直前そこの段差にコッソリ上ってたろ。別に俺、そんなの気にしないのに」
「…だったら、年上の優しさでそういうのは見ないふりしててよ!こっちは、精一杯だってのに!」
ユーリの揶揄に、流石の礼之も機嫌を損ねたような声を上げた。
「怒るなよ。誰も嫌だったなんて言ってねぇだろ?」
「どうせ僕は、心も身体も未熟な青二才ですよ」
「それでも、俺の大好きなサムライだ」
返された言葉の爆弾に、礼之は一瞬怒りも忘れて硬直する。
「…何か変なものでも食べた?」
「別れ際だと思って素直になってみりゃ…それかよ!ああ、食ったさ!エロ侍の濃厚なエキスをな!お前が食わせたんだろうが!」
「そんなはしたない事、公衆の面前で言う!?」
「お前程じゃねぇよ!」
それまでの感傷どころか雰囲気まで台無しになりそうな口論を繰り広げていた2人だったが、予めスマホにセットしていたタイマーが鳴るのを覚えると、お互いに口を噤む。
「…そろそろ行こうか。それ、返して貰って良いかな?」
首に巻かれたままのストールを指す礼之に、ユーリは暫しの沈黙の後で首を横に振った。
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