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【YOI・男主×ユーリ】扉の向こうとこちらのエロス

第4章 エピローグ


正午。
「ターミナルから空港行のバスも出てるけど、電車の方が時間もお金もかからないよ」
「なら、そっちにする。…その方が、空港でお前と長く過ごせるし」
「え?」
「な、何でもねぇよ。東京はメトロや駅が複雑だから、案内よろしくな」
再びホテルのロビーで待ち合わせした2人は、礼之が普段利用している路線とは異なる地下鉄で、空港に向かって出発した。
「あれから、家の人に怒られなかったか?」
「ううん、全然」
「ならいいけどよ…」
「そうだ、後で空港内のショップで純さんへのお礼の品を買おうと思っているから、一緒に選んでくれる?」
「ああ、いいぜ。俺もサユリにちゃんと礼言わねぇとな」
何処かホッとした表情をするユーリを尻目に、礼之は帰宅後の事を脳裏に反芻させていた。

純が口裏を合わせてくれたお蔭で厳しく叱責されるような事はなかったが、礼之は帰宅後祖父の部屋に呼ばれた。
書道の先生をしていた祖父の部屋は何処となく墨の匂いが漂っており、些か緊張した面持ちの孫に「私は礼之が良い子なのは知っているが」と前置きした上で、「両親の保護下にある未成年のお前は、何かあった時に自身では責任が取れないのだから、今後はお前とお前の大切な人の為にも良く考えて行動しなさい」と、久々の説教と臨書を命じてきたのである。
級や段は持っていないが、礼之は幼い頃から祖父の手ほどきで書道を嗜んでいる。
「スケートと同じで、雑念は文字にも現れるぞ」と、ユーリとの待ち合わせに逸る己の心を見透かされたようになった礼之だったが、筆を滑らせていく内に落ち着きを取り戻していった。
(僕が、ユリを好きな気持ちに偽りはない。だけど、未熟な僕の我儘でユリや皆に迷惑をかけるのは、間違ってる…)
「有難うお祖父ちゃん。心配かけてごめんなさい」
「大切に育んでいきなさい」
「はい!」
全てを把握しているような皺だらけの笑みを見て、礼之も口元を祖父と同じ形にした。

朝に見た時よりも少し大人びたような礼之の横顔を、ユーリはつい見入ってしまう。
「…どうしたの?」
視線に気付いた礼之に、ユーリは反射的に顔を背けようとしたが、「君に見られるのは嬉しいよ」とさり気なく腰に手を回され、仄かに顔を赤くさせた。
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