【YOI・男主×ユーリ】扉の向こうとこちらのエロス
第4章 エピローグ
ホテルから少し離れた駅周辺のカフェで、2人はモーニングを頼んだ。
オープンテラスの席で満開の桜を眺めながら礼之がカフェオレを飲んでいると、ユーリが目の前で意味ありげにホットドッグを口に含もうとする。
「コラっ、はしたない!」
「はは、今の言い方ちょっとサユリに似てた。昨夜、バスルームでお前は俺に何したっけ?ほんとニッポンジンって変態だよな」
「…僕のはユリ限定で、変態という名のサムライなの!」
「何だよそれ」
その後ユーリが黙々と食事を続けていると、不意に礼之の手が伸びてきた。
何事かと少しだけ身構えたが、節くれた礼之の比較的長い指が、ユーリの髪に絡まった桜の花びらを摘まむ。
「ユリの事、桜の精霊が仲間かと思って寄ってきたのかな?」
薄紅色の花びらをかざしながら、礼之の青い瞳が笑みの形に細まる。
「でも、何となく判る気がする。純白じゃなくてうっすらとピンクに染まっている所とか、熱に浮かされた時のユリの肌みたいだもん」
「やっぱりお前って、変態…」
「どうして!?下品な表現してないでしょ?」
「それ以前の問題だ、このエロ侍!」
桜色に頬を上気させて怒鳴るユーリに、礼之は訳が判らないという顔をした。
時折口論を挟みながらも楽しく朝食を終えると、礼之が「一度、広尾の自宅に戻る」と告げてきた。
「純さんに口裏合わせて貰ったけど、突発的な外泊しちゃったし。ユリを羽田まで送った後でリンクの練習に行こうと思ってるから、その準備がしたいんだ」
「ふーん…じゃあ、12時のチェックアウトまで俺1人か」
「それとも早目にホテルを出て、僕の家に来る?ここから地下鉄で1駅だし、一度家族にもユリの事きちんと紹介したかったし」
礼之の質問に、ユーリは一瞬硬直する。
真剣な青い眼差しに見つめられたユーリは、暫し両手を思案するようにモジモジと動かしていたが、
「悪い…今回はパス」
「…そう」
「勘違いするなよ?礼之の家に行くのが嫌なんじゃねぇから。ただ、お前の言う通り唐突でまだ心の準備みてぇなものが…だから、次回きちんと招待してくれ。その時は必ず行く」
真っ直ぐこちらを見据えながら返事をしたユーリに、礼之も力強く頷いた。