【YOI・男主×ユーリ】扉の向こうとこちらのエロス
第3章 Tokyo's Midnight
礼之が、再び腰にタオルを巻きつつバスルームのドアを開けると、強めの芳香が鼻を擽った。
その香りの正体が、ユーリが普段使用しているオーデトワレだと判ると、彼のいるベッドルームへと移動する。
「ユリ、」
「戻ったのか。ベッドサイドにあったお前の飴、1個貰ったぞ」
ベッドの上でヘッドホンをしながら寝転がっていたユーリは、礼之の呼びかけに身を起こす。
「のぼせたりしてねぇか?」
「うん…平気。あのさユリ、君バスルームに近付いたの?」
「え?ああ…シャワーの音聞こえたし、そろそろいいかなって。実は礼之が戻ってくるちょっと前に、どうしても空調の温度変えたくて、入口横のスイッチを動かそうとしたら、その時手に持ってたトワレの瓶を落としちまったんだ。慌てて床とか拭いたけど、やっぱ匂うよな?悪ぃ」
眉根を下げながら返事をするユーリを、礼之は眺める。
「怪我してない?」
「瓶は割れなかったから大丈夫だ。その代わり結構中身減っちまったから、帰りの免税店で買い足すとでもするかな」
肩を竦めて苦笑すると、ユーリは「喉乾いたろ?」と礼之に飲み物を勧めてきた。
冷たい水を所望する礼之に、ユーリはベッドを下りて冷蔵庫内のミネラルウォーターを手渡してくる。
「…」
そんなユーリの動きを、暫し観察するように見ていた礼之だったが、短く礼を言って受けとると喉を潤した。
「そろそろ休むか。お前も風邪引く前に、服着ろよ」
ヘッドホンを外しながら、ユーリは照明のスイッチを動かして光源を落とすと、ベッドに潜り込む。
ベッドサイドの仄かな灯り以外は薄闇に包まれた中、礼之は頭の中で何やら思案しながらベッドのユーリを見つめていたが、やがてその青い瞳を怪訝そうに細めると、反対側からベッドに入り、背後からユーリに抱き着いた。
「お前、風呂から出てまだそのまんまなのかよ?早く服着ろ!」
「ねえ…どうして僕の言い付け守らなかったの?」
耳元で囁かれた低い声に、ユーリはビクリと身を震わせる。
「…だから言ったろ。お前もシャワー浴びてたし、どうしても空調の温度を」
「本当に…?」
「こ、こんな事嘘ついてどうすんだよ!」
慌てて抜け出そうとするユーリだったが、きつく回された礼之の腕がそれを許さなかった。