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【イケメン王宮】花冠

第16章 -過去との再会





「あ!私ったら 部屋に忘れ物しちゃった。
ちょっと行ってくるね!」

一同 セレネを見てキョトンとしている中
ユーリが一緒に来るって言いそうに口を動かそうとしていたが
捲し立てるように言葉を繋いで
皆に笑顔を向けて執務室を出た。




パタパタ廊下を走って
部屋に慌てて入って後ろ手でドアを閉め
背中をドアに預けズルズルとしゃがみ込んだ…

「ウゥッ…ヒック……ウッ…」

部屋まで我慢したけど 我慢も限界で
涙を流した…

さっき言った言葉に嘘はない。
本心から思っている事…
私が伝えたかったこと
私のやるべき事

皆を安心させたかった。
自分の中でも区切りを付けたかった。

あのままいたら
レオもアランも自分を責めていただろう。

そんな事は、望んでいなかったし
責めても欲しくなかった。
飛び出した私が悪いのだから

あの言葉通り
私は弱い
まだまだ甘ちゃんだ

幸せは…失って初めてわかる
当たり前の普通の日常が どれ程幸せなものなのかを知らない人は、とても多い。

私もその一人だった
けれど 気がつくことが出来た
気がついたなら
今を大切にすればいい

でもね…ついた傷は、まだ新しくて
前を向きたい自分と
辛い自分が交差していて

頭で考えて思っていることを伝えた
でも、心が追いついてくれない
分かっているの あの言葉に嘘なんてひとつもないもの

唯、心の歩み方が遅いだけ

綺麗事かもしれない
でも…誰かを傷つける勇気も
まだ私には無い…

心に追う傷は、少ないほうがいい
拭えない傷をつける必要は無い…

同じ想いをする人は、
一人でも少ないほうがいい

だから、笑いたかった…
笑っていて欲しかった
安心して欲しかった

もう少しだけ
もうほんの少し思いっきり泣いたら
笑うから…

『なんて事無い!』そんな顔して
笑うから…

今は歩みの遅い心に寄り添って
涙を流させてください…



一頻り涙を流し 腫れた目を冷やし 落ち着かせてから
ジルが調節してくれた公務を再開した。

公務を終わらせ 湯浴みをし
ほっと息をついた時
自分の手をまじまじ見て
ふと思った…

随分ピアノに触れていないなって
爪は、変わらず短くしていた

前は、指が動かなくなるのが怖くて
毎日のようにピアノに触れていたのに

そんな事考えたら
無性にピアノに触れたくなった

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