第11章 -自覚 [R-18]
…と、そこまでしたところで 手を止めた…。
大きく深呼吸をし
ネグリジェの胸元を元に戻し リボンを結び 衣服を整えると 起こさないように 頭の下に腕をねじ込みセレネの前髪を梳かし 額に接吻を落とした。
起きることなく スヤスヤ寝息をたてるセレネ 身動ぎをし ゼノの胸に擦り寄る。頭を撫でながら そっと溜息を漏らした。
(…俺は、何をしている… 恋い焦がれていたからといって寝ているセレネに手を出すなど…。)
あの日…連泊した外交から戻ると セレネは、消えていて セレネに付いているはずのマリアが泣きながら 手紙を差し出してきた。
何度も謝罪の言葉を並べながら。
手紙は、ユーリからでセレネの事が事細かに書いてあった。
頭に血が登った。
セレネをここまで大切にしてきたのは、ウィスタリアのプリンセスにする為ではない。
花のような笑顔を クルクル変わる表情や仕草を壊さないよう
傍で守り続けてきた。
最初の頃のビスクドールの様な感情のない顔に戻さぬよう 真綿に包むように 守り続きてきたのだ。
ウィスタリアに迎えに行こうとも思ったが 自分も国王という立場。
プリンセスに選ばれ 簡単に撤回など出来ないことも 嫌という程分かっていた。
腹を立てていたが それは、ユーリやセレネ、マリアましてやアルにでは、無かった。
連れていかなかった自分に対してだった。
連れて行っていれば こんな事には、ならなかっただろう。
セレネの性格上 一度引き受けたことは、成し遂げる。
手紙にも書いてあった。
返事を書かなかったのは、未練がましく『戻ってこい』と書いてしまう自分がいたからだ。ユーリから手紙は、何度も貰っていた。
セレネの事を知らせてくれていた。
セレネのお披露目パーティーに出席する事は、初めから決めていた。 得体の知れぬ国と言われている事も 『氷の国王』と呼ばれていることも知っていた。
突如訪れ 泊まることも異例では、あったが セレネの為の政。行かぬ選択などない。これから 外交や交易を交わしていこうと思っていた国であったから 問題などなかった。
セレネに逢えるのが待ち遠しく長く感じた。