第2章 -新しい日々
---更に2年後…
外交を終え 予定より早くシュタイン城に戻ったゼノは、辺りをじっと見ていた。
「…セレネは?」
いつもは、帰ればセレネが笑顔で迎えてくれていたが
予定より早く帰ってきた為 いつもの笑顔が見られなかったのだ。
アルは、時間を見 セレネの予定を思い出す。
「この時間ならマリアと一緒のはずですが」
「ゼノ様おかえりなさいっ セレネなら中庭に居ますよ!」
帰ってきたゼノを見つけユーリが駆け寄りながら答えた。
「そうか、では 中庭に行くとしよう」
「俺も一緒に行きます」
ゼノ達は、中庭に向かい歩いていくと
微かに歌が聞こえた…
♪♪~♪〜〜
中庭をそっと覗くと シロツメグサが咲き誇る中、セレネが座り歌っていた。
そばには、マリアがおり 二人で花冠を作っているようだ。
「お嬢様は、本当に歌がお好きですね」
口ずさんでいた歌をとめると ふわりと微笑み
「ふふっ …今日は、お天気もいいし 風も柔らかくて心地よくて とても気分が良いから思わず歌っちゃったわ」
「でも、お嬢様?お歌もいいですが そろそろ《恋》の一つでもしてはいかがですか?
折角のお料理やお菓子作りも殿方に食べていただかなくては勿体無いわ」
ふぅ…とマリアは、大袈裟にため息をついて言ってみせた。
マリアの言葉にキョトンと大きな眼をパチパチさせていると「確かにそうだが、セレネを簡単にくれてはやれんな」と突然聞こえた声に驚き 声のした方を振り返ると 優しい笑みを携えながらも複雑な顔をしたゼノがいた。
「セレネ様に恋など…まだまだ早すぎます!!!」
アルは、顔を赤くして怒り ユーリは、眉間に深い皺を寄せていた。
「お兄様おかえりなさい!いつおかえりに?気が付かなくてごめんなさい」髪をフワフワさせながらゼノに駆け寄り 抱きつくとふんわりと笑顔を向けた。
ゼノに頭をクシャッと撫でられ少しだけ肩を窄ませふふっと笑うだけで周りの空気が穏やかになる。
「マリア、セレネに恋なんて進めないでよ…」そう言うユーリは、項垂れていた。
「クスクス…あらあら、お嬢様の彼氏や旦那様になる方を生きているうちにこの目で見られるかしら?」