第10章 -お披露目パーティー
なるべく お誘い頂いたダンスは、受けるようにしていたが
目まぐるしく 誘われ 休む暇もなく居ると ジルがすぐに察知しアランのそばに連れ出してくれ
グラスを片手に 挨拶にいらして下さる方と言葉を交わしていた。
「プリンセス。」
後からジルに声が聞こえ話していた方に失礼します。と失礼する事を伝え 近くのテーブルにグラスを置き振り向くと…見たことのある足元が目に入った。淡く鼓動が跳ね上がるのを感じ胸の前でギュッと手を握った。
「プリンセス、シュタイン国王のゼノ様です。」
ジルの声に弾かれたように顔を上げた。
目の前には、シュタイン国王で自分の大好きな兄がいた。
嬉しくて 鼻の奥がツーンとする。泣くことなんて出来ないからグッと我慢をして 顔を見あげると満面の笑が零れる。
ゼノもセレネを眩しそうに愛おしそうに見つめていた。
「遥々、遠くシュタインからお越しくださりありがとうございます。ウィスタリアプリンセスのセレネにございます。」
綺麗にカーテシーをすると
「…ああ、ゼノ=ジェラルドだ。ゼノでいい。噂は、聞いていたが美しいプリンセスだ。」
「ありがとうございます。ゼノ様、お逢い出来てとても嬉しく思います。」
ゼノの顔を見て自分の顔が緩むのが分かる。
ゼノのすぐ背後には、アルの顔が見える。
アルは、少し顔を赤くして眼鏡をクイッと上げながら咳払いし少し前に出てきた。
「コホンッ…シュタイン国王ゼノ様の秘書兼騎士団長のアルバート=ブルクハルトです。アルとお呼びください。」
アルと握手を交わし
「クスッ…アル、仲良くしてくださいね」
「…よ、宜しくお願いします。プリンセス…」
折角、視線があったのに またも 顔をそらされてしまった。
本当は、直ぐにでも ゼノに飛びつきたかったがここは、沢山の人の目があるパーティー会場。
グッと我慢した。そんなセレネに気が付いたのか ゼノがスっと近づき
「…プリンセス。踊ってもらえるか?」
手を差し出してきた。
顔を上げ 嬉し泣きのような顔をしながら
「っ…。勿論です。」
ゼノの手をとった。
久々に触れられた大好きなゼノの温かさに触れている場所が熱くなるのが分かった。