第9章 -久々の休み
ジルから報告を受けたユーリが血相を変え 部屋に飛び込んできた。
「レオ様!セレネ様は?!」
「…寝てるよ。ユーリ落ち着いて…。」
ベッドに近づくと 不安そうな顔をしながら セレネの顔を覗き込み そっと 指の背でほほに当てると 熱い…と呟いていた。
「…ここの所 …休みなく動いてたから、なんでこんなになる迄 気づいてあげられなかったんだろう…」
悔しそうに 眉間に皺を寄せ 手をギュッと握っていた。
「…ユーリだけじゃないよ。…多分、みんなそう思ってるはずだよ。『そばにいたのに』ってね…。」
俺もだよ…。と呟いてセレネの手をギュッと握った。ユーリは、顔を上げ 眉毛を下げながら少し目を伏せると
「…濡らしたタオル持ってくるので レオ様 もう少しセレネ様についててもらえますか?」
「…うん。暫くいるよ…。」
それを聞いて ユーリは、部屋を後にした。
しばらくと言わず ずっとついていたい。一晩中看病していたい。
そうも行かないなんて分かってるけど やっと見つけた妹だ 誰が手放せる?
セレネと繋いだ手をそのままにベッド脇に置いた 椅子から ベッドの縁に腰掛け スースーと寝息をたてる 彼女を覗き込んだ。
額に汗が滲んで 長い睫毛は、閉じほんのり色づいた頬に影を落とし プルんとした唇は、艶々で少しだけ口を開けてハァハァと熱い息を吐き 夜着に包まれた胸元は、大きく上下していた。
(…熱がさっきより上がってるかな…可哀想に…)
張り付いた前髪を退けると 少しだけセレネが身動ぎをし微かに横を向いた。
すると 髪が流れ顕になる首筋 白くて細い それでいてしっとり汗ばんだ首筋…綺麗な鎖骨…
自分自身に熱が入るのがわかった 胃のあたりがドクンッと飛び跳ね …慌ててセレネから視線をそらし 右手で口元を覆った。
(…っ…。俺何考えてるんだよっ。セレネちゃんは、熱を出していて しかもっ 自分の妹だぞ?ガキじゃあるまいし…)
顔を背け 大きく一呼吸ついて 気持ちも 自身も落ち着かせた。
握っていたセレネの手を布団の中に入れ離すと 肩までしっかりと布団をかけ 椅子に座り直し じっと セレネの少し早い呼吸を聴いていた。