第8章 -ダンスレッスン
………。
君を見た時 ここにいるべきじゃないと思った。
私利私欲に取り憑かれた人間の中 君だけ柔らかい光に包まれていたから……だから言ったんだ。
『そうじゃないなら、直ぐに帰った方がいい。』って…
そう言ったのに 君は、眩しいくらいの笑顔で『プリンセス』になる事を選らんで前を進むんだね。
そんな君を見て 目が離せなくなるのは、当然だった。
元々 セレネをずっと探し続けていたのだから…。
もっと強く言って君を帰らせていたら 何か変わっていたのかな?…
いや…きっと、俺の言葉では、届かなかっただろうね。
君が決めたなら 俺は、俺ができることで君を守るよ…アランやレオの護り方とは、違うと思うけど…君につく傷が少しでも少ないように……。
- ダンスレッスン前
ルイは、じっとセレネを見ていた。
カーテシー〔お辞儀の名前〕をするのは、貴族や王族独特のもの。
それを崩すこと無く スっと完璧にしたからだ。
昨日の壇上での挨拶と今 目の前のセレネ…貴族社会にいた?…
ウィスタリアでセレネを見かけたことは無かった。
独自でクロフォード家の消えた娘を探していたルイにとって セレネが見つかった事は、喜んでいた。
彼女は、ルイにとってとても大切な女性だったから。
でも、幾ら探しても見つからなかったし相手のセレネが目の前に現れ 完璧な立ち振る舞いをするのを見て戸惑うのも当然のことでもあった。
(誰かがずっと隠し続けていた?
それにしては、のびのびしている…)
悪いとは、思ったものの そのまま曲を流してもらった。
「…ジル、曲流して。」
滑らかなステップ 優雅な踊り 何より楽しそうな彼女。
それだけで大切に育てられたのがわかる。
閉じ込められていたわけでは無さそうだ。
監禁されていたら もっとギスギスしたダンスになっているはずだ。
直すべきところは、あるにせよ型が美しい。
笑顔も出ている。変換にも対応出来ないわけじゃない。
何より 伸びやかだ。これだけで 彼女の武器になる。
人を傷つけずして勝てる術をセレネは、持っているのだ。
それだけで彼女を守ることが出来る。
(細い部分も直して、完璧にする…)