第7章 -確信
ジルの執務室を出ると ユーリは、私の手首を掴み 少し足早に歩いていた。
「ユ、ユーリ??」
声をかけても 返事は、帰って来ず うつむき加減のユーリの顔を覗こうとすると フイッと背けられてしまった。
(……ま、まずいかもしれない……)
握らていた手首が先程より 強くにぎられた。
覗こうとした時より進む足は、早くなっている…
突然 ピタリとユーリの足が止まったのに驚いたものの 私は、急には止まれず ユーリの背中に顔をぶつけた。
(…いたっ…)
止まった場所を見上げれば 綺麗な細工が施されている扉の前。
ガチャッと音が聞こえ 音がした方に顔を向けた途端に グイッと手首を引っ張られ トンっと背中に冷たさを感じれば ドアに押し付けられていて
目の前には、俯いたユーリの頭…自分の顔の横にユーリの手があり逃げられないようになっていた…
「…ユ、ユーリ?…」
「どういうことか説明して。なんでウィスタリア城にセレネがいて ウィスタリアの新しいプリンセスって呼ばれてるの…」
ポソッと話、いつものユーリより半音低い声そして早口…
この状況が とてつもなくまずいことをよく知っていた…
ユーリがこうなる時は、大抵……………怒ってる時だ………。
最近は、こんなこと無かったけど…
私を怒るのは、大抵ユーリの役目だった。
アルは、滅多な事では怒らない。ユーリと喧嘩なのかじゃれあいをしている時は、 言葉が悪くなるし 声も大きくなるけど セレネに対して 怒ることは、滅多にない。
怒っても表情を変えず 正論を早口で喋って眼鏡を上げる回数が多くなるだけ。
ゼノも怒ることは、ほとんど無かった。
ゼノの場合、怒ると言うより 機嫌が悪くなる。もしくわ 眉間の皺が深くなる…声を荒らげているところを聞いたことがない。
アルやユーリ曰く 怒らせたら一番怖いらしいが十数年一緒にいて も見た事が無いのだ。
ユーリに聞いた話だと「くどい!」とか「○○だ!」と短決に終わらせるらしい
セレネの前では、軽く微笑んでいるか 表情無し(に見えるだけ)だ。
基本、三人とも セレネには、甘いのだが…
そんな三人だから 纏め役で セレネを怒ったり叱るのは、ユーリの役目だった。世話焼きだから元からなのかもしれないが…