第4章 -プリンセス選考会
『クロフォード家のご令嬢と思わしき方を王宮にお連れしましたよ。お会いになってはいかがですか。』
そう ジルに言われていたが 期待はしていなかった。
セレネを探して既に十数年も経っている。
生きていたとしても[珍しい髪色をしていたことや昔の面影]は、判断材料になる位で 曖昧なものだ。それに下手すりゃ生きているかも…
それでも 探すのを辞めようとは、思わなかった。
それだけ俺たち…いや、俺にとって 妹の…セレネの存在は、大きかった。
親がいない今、託された妹が自分生きる存在意義のようにも感じていた。
(『守る』って言ったのに言ったそばから 守れてやれなかったしな…今度こそ《大切なもの》を守れるように 騎士団長まで上り詰めた。でも…《守るものが》が居なきゃ意味ねーのに…)
自虐めいた言葉を思い浮かべながら 見回りをしてれば 中庭から声がした。
声のした方をじっと見れば…
(……ルイと話す女…ジルの言ってたセレネに似てる女ね…なるほど…ブルーブラックの髪ね。珍しいとは言え、いない髪色じゃない。今までそれで外れてきたからな。顔は、と……)
似ていた…あの、火事の日に行方が分からなくなった妹に良く似ていた…。
ただ、《似ていた》であって 決定ではない不確かなものだ。
しかも 自分の記憶は、既に十数年も前のもの。薄れていてもおかしくない…将また 勝手に塗り替えてしまっている可能性だってある訳で 安易に《本人》と決定付けるのは、危険だと判断し 唯じっと見ていた。
「……。」
女の十数年は、随分変わるだろう…生きていたとしても 見分けがつくのかも怪しいものだ。
成長期真っ只中の十数年だ、会うことが出来たとしても記憶の中のセレネとは、全くの別人になっている可能性だって大きいわけだ…
そんな事を考えたら 見つけられるかどうかも かなり怪しいな…と
先日思っていたばかりの今回だ…。
ハァー…思わず大きな溜息が出た。
記憶の中の妹…可愛い自慢のセレネ…
(『にいちゃま』と満面笑みでちょこまかついてまわっては、走る俺達に追い付けなくて転んで泣いてたっけ…
思い出すのは、笑った顔…)
記憶の中のセレネを思い出し ふっと笑が零れた。