第3章 -ウィスタリア
彼女の手を取りエスコートし、馬車に乗せた。
彼女に探りを入れるため他愛ない話をした。
「私は、ジルと申します。突然お声をおかけし 無理に乗せてしまったのではないでしょうか?」
「いえ、こちらこそ ご親切にしてくださったのにも関わらず ご挨拶が遅れてしまって申し訳ありません。
私は、セレネと申します。よろしくお願いします。」
ふわりと笑うセレネは、とても綺麗で可愛らしかった。
クロフォード家の娘と同じ名前だが 珍しい名前というわけではなかった事から名前だけで判断はできなかった。が可能性は、高くなったと言えるだろう。
お城に着くまでの間 ジルとセレネは、話をしながら和やかな雰囲気でいた。
お城に着くと、まずジルが降り セレネをエスコートして下ろした。
馬車から降り顔を上げたセレネは、目を見開いて驚いていた。
「ぇ……あの…ぇ……ここ…は…」
当然だろう…お城といっても 目の前に広がるのは、【ウィスタリア城】であってセレネが思っていた【シュタイン城】とは違っていたのだから。
ジルは、『お城』としか言わなかった。
移動時間を考えれば分かるようなものだ…
当然 ウィスタリアに居るのだから 周りが聞いても【ウィスタリア城】と思うであろうが 【シュタイン城】を思い浮かべていたセレネには、驚きでしかなかった。
城は、城でも《城違い》である。。。
驚くセレネの手を取り 背中に手を添えたジルは、「さあ、どうぞ」と言わんばかりに 中へグイグイと連れていく。
有無をいわせぬ行動に困惑しながらも 中へ足を踏み入れ シュタイン城と違う柔らかい雰囲気のお城に目を奪われていた。
他国のお城に入る事も無かったセレネには、目新しく見えたのだ。
「さあ、ここですよ…」
と、扉が開き通された場所は、大広間。
「クラシック…?」
優雅なクラシックが奏でられ 煌びやかな大広間に目を輝かせてセレネは、魅入っていた。
大広間には、自分と同じくらいの女性が既に何人かいた。
華美に着飾った女性達をみて、セレネは、少し尻込み…
シュタインに同じ年頃のお友達もいなかったからだ。
自分とは違い華美に着飾られた女性を見て 場違いなのではないかと思いつつも そんな女性たちをポーっと眺めていた。