第3章 -ウィスタリア
この日 買い忘れたものがあり 自分の目で確認せずには、納得ができず 城下に来ていた。
目的の物を買い終え馬車に戻ろうとしたが一人の女性に目が止まった。
華美ではないが シンプルに纏めた綺麗な装い。
ふわりとまとめられた髪 何かを真剣に悩むも決まったのか ふわりと微笑んだ顔が 可愛らしくも美しくい 彼女を纏っている雰囲気なのだろうか…惹き付けられるものを感じた。
それに 彼女の髪の色…まさかとは思うが…レオとアランの妹の事を思い出していた。
十数年も前に行方不明になったクロフォード家の娘。
珍しい ダークブルーの髪に同じ色の瞳をしていた。
年頃も同じくらいだろうか? 変わらずウィスタリアにいれば、プリンセスに一番近い存在であったはず。だが、陰謀渦巻くあの火事の後 乳母共々忽然と姿を消した。
あれだけの捜索をされたにも関わらず見つけ出すことが出来なかった。レオやアランは、今も探し続けている。
王宮官僚や騎士として王宮に居るのも 一番探しやすい所…というのがあったのも分かっていることだった。
「貴女の髪の色によくに合いそうですね」
女性が悩んでいたのが髪留めと気づき そう声をかければ、元々大きな目を更に大きくし 少し驚いたような顔をしながらこちらを見た。
瞳の色を確認したかった為に声をかけたのもあったが…随分美しい女性だと改めて見惚れた。
(やはり、ダークブルーの瞳…聞いていた人物によく似ている…)
「あ、ありがとうございます」
驚きながらも ふわりと笑った彼女を見て、王宮に連れていくべきだと思った。
買い物を済ませれば出てくるのだから 先に店の外に出て どう連れていこうか思いを巡らせる。
シンプルにドレスアップされた格好から見ても一人で行動するとは、考えにくい。
もし彼女が消えたクロフォード家の娘なら尚のこと 城下を一人出歩くはずもない。
それに今日は、プリンセス選考パーティの日だ あの格好を見れば 城へ行く可能性もあったのではないかとも思ったが もし、本人ならそんな身元がバレる可能性があるようなことは、しないだろう…
今は、彼女を何とかして 城へ連れていくことが優先ですね。二度はないチャンスかもしれません。
思いを巡らせ 出てきた彼女にもう一度声をかけた。
「貴女もお城に行くのですか?」