第17章 -揺れる気持ち
ずっと目を背け続けていたこと。
いつかは、向き合わなきゃならないのに
後回し後回しにし続けて 根本的にあった自分の心の奥底のパンドラの箱にしまおうとしたものが
いい加減 こっち向いてよ。ちゃんと向き合ってよ…そう言って 結果、しまいきれず蓋がカタカタ言い出している
分かっているんだ。
向き合うべきこと…避けてなんて通れるはずがないのに
弱い自分が顔を出して そっぽ向いて…
蓋をしていた 本音。
この手の悩みは、苦手…
相手がある事で悩むのは、私の中で苦手な事だ。
一人で生きていかれない人間は、当然つきまとうことなのだけれど
正直、どうしていいのか分からない悩みでもあると思う。
悩んで解決することならば
いくらでも 悩んで壁にぶち当たればいいと思う。
でも、対相手って答えが出ない。
だってそうでしょ?
私がいくら悩んでも 相手がどんな返答をするのかなんて分からないのだから 悩んでこんがらがって
一人で暴走しても仕方ないこと。
相手の気持ちを考える。とは、訳が違う。
それに…人を傷つけるのが怖い。
そう思った心は、まだ健在で…進めることを拒んでいるのも確か。
だからこそ 蓋をしようとした気持ちでもあるのだ。
本音に気が付かなかったから…ううん、気がつこうとしなかったから
避けていた。
傷つくことも傷つけることも…
時間が経てば経つほど 話しにくくなるのもわかっている。
話すべきなんだよね?
話さなきゃならない事だよね?
考えれば考える程 不安が大きくなっていく。
心地いい風がサラサラと髪を揺らし頬を掠め
ドレスのチュールをそよそよと動かした。
空には、月が登り始めていて 一番星が輝き始めていた。
大きくため息をこぼれ落とすと
ふぁさりと肩にかけられた ふんわりとした温かさに驚けば
優しい微笑みをたずさえたユーリがストールをかけてくれていた。
「ユーリ…。」
「日もくれて昼間の温かさと違うんだから 何時間もここに居たら風邪ひくよ?」
「そんなに長い間いたかな?…」
「うん…月が出てるくらいだからね。」
「そっか、そうだよね…」
「…悩み?」
「……。ぅん…。」
「俺に…言えないような悩み?」
「…愚痴ってしまいそうな悩みだから…。」
ふっと 息を漏らすと ユーリは、頭の後ろで手を組み 紺色の月が登った空を見上げた。