第15章 shine of the palm
確かに龍が言うように、他のメンバーと違ってその場でじっと立ってるだけに見えなくもない。
「所詮、代役ってトコなんじゃねぇの?」
龍「所詮って、楽。そういう言い方は良くないぞ」
天「楽にはそう見えるんだね」
「お前には違って見え・・・」
いつものひねくれた言い方に反論しようとすれば、それまで動かずにいた愛聖がスッと体の向きを変えて歩き出す。
天「ほら、ね?」
演出だったのかよ!
「それにしても、何気に息ピッタリな感じが妙に腹立つよな。同じ事務所ってだけで、教育方針も同じなのかよ。アイドリッシュセブンはアイドルで、愛聖は女優業だろ?」
龍「でも、オレたちと一緒の時だって愛聖は曲出てたじゃないか。作曲家も、オレたちと同じ日向さんだったのやつもあったし」
そりゃそうだけど、なんか・・・あんまり仲良くされてんの見ると気に入らねぇっていうか。
天「龍、そろそろ気付いてあげたら?楽は単なるヤキモチ妬きで、気に入ったおもちゃを取り上げられた不機嫌な子供なんだって事を」
「はぁっ?!」
思わず大きな声を出した事に、その口を押さえる。
やべぇ・・・リハ中だった・・・
チラチラとこっちを見るスタッフにすみません・・・と小さく頭を下げれば、天や龍はいつの間にか俺から距離を取ってモニターの前へと移動していた。
「・・・ったく、俺だけが騒いでた感じにするなよな」
ひと足遅れでモニターの前に立てば、ちょうど曲のラストでカメラが愛聖を抜いた。
龍「えっ・・・」
メンバーがそれぞれ最後のポーズを取り・・・曲が終わる。
天「さっきの愛聖、あれは二階堂大和がやる事をコピーしたんだよね?」
「代役でって言ってたんだからそうなんだろ・・・って、龍?お前はなんでそんなに赤くなって固まってんだ?」
さっき小さく声を上げたままの姿勢で龍が硬直している。
龍「今の最後のやつ・・・」
「最後のって、カメラで抜かれたモニターいっぱいの愛聖がキスを投げただけだろ。それがどうかしたのか?」
龍「オレ・・・その愛聖と目が合っちゃって、撃ち抜かれた気分・・・」
・・・はぁっ?!
天「いつもは投げる側だけど、投げられたのが新鮮だったとか?」
「それにしても、愛聖だそ?」