第15章 shine of the palm
❁❁❁ 楽side ❁❁❁
「それでは音入ります!」
壁に背中を預けながら、アイドリッシュセブンのリハが始まる様子を見る。
突然慌ただしく愛聖が連れて来られたと思えば、アイツらに混ざってリハだとか・・・
しかも、代役で。
周りのスタッフからは困惑した空気が一瞬流れたが、それも愛聖のひと言でガラリと変わった。
龍「土壇場で入る割には、なんか堂々としてる感じだけど・・・大丈夫なのかな」
天「さぁ?愛聖と二階堂大和じゃ、背格好も違い過ぎる。1歩を踏み出す歩幅もね。そこをどうカバーするのか、ちょっと見てみたいと思わない?」
スッと照明が落とされ、曲が流れ出す。
アイツらがここで歌うのって、二階堂のドラマとタイアップしてるやつだよな?
それを代役で入って、とりあえずの形でとか・・・愛聖もなにやってんだよ。
そう、思った矢先に愛聖が動き出し、歌い始める。
メンバーとのポジション移動も、あたかも最初から愛聖がメンバーであるかのようにそつなくこなす。
まるで、普段からそうやって練習してるかのように。
・・・まさかな。
いや、でもそうとも限らねぇ。
愛聖がまだデビューする前に、親父がいろいろな事を叩き込んでる時期があった。
舞台へ連れて行っては初見でどれだけ吸収する事が出来るか、だとか。
俺たちのレッスン風景を見せに来ることもあった。
いったい何のためにそんな事をさせてるんだ・・・と、聞いた事があったが、女優業を幅広く活動させる為の単なる訓練だと、俺を見ることもなく、眉ひとつ動かさずに言いやがった。
とにかく親父は、忙しいと言いながらも暇さえ見つければ愛聖を呼び寄せ、同じ時間を過ごして・・・
親父はなぜ、そこまで愛聖に執着してたんだ?
それに、他の研究生と比べても扱いが違った気がする。
一段と厳しかった時もあったけど、それを愛聖に言えば、親父は優しい時もあるとか。
アイツが優しい?
・・・想像つかねぇな、そんな姿。
つうか、想像したくもねぇけどな。
龍「なぁ、天。他のメンバーはいろいろ動いてるのに、どうして愛聖は微動だにしないんだ?もしかして、フリを忘れたとか?」
龍の言葉に俺もステージへと視線を戻す。