第15章 shine of the palm
陸「スタジオに向かいながら環が言ったんだ。練習してる時なら、ヤマさんの代わりにマリーが入れるのにって。それを聞いてオレ、みんなにすぐ戻るって言って戻って来た。MEZZO"が忙しい時に、愛聖さん、リハなら最悪本人じゃなくても平気って言ってたよね?!」
『い、言いましたけど・・・でも私が行ったところで何も出来ることなんて』
陸「あるよ!だからオレと一緒に来て!もう時間が無いから早く!大和さんとマネージャーはそこのテレビつければリハの様子が見れるってスタッフさんから聞いたから、あとはよろしく!行こう愛聖さん!」
掴んだ手を引き寄せ、七瀬さんが駆け出す。
『七瀬さん!そんなに走ったら発作が!』
陸「これくらいなら大丈夫!いつも三月に付き合ってタイムセールの時に走ってるから」
そういう事じゃなくて!と言いながらも、一向に走るのをやめない七瀬さんに必死でついて行く。
陸「遅れてすみません!」
スタジオに飛び込んだ七瀬さんが、大きな声で言いながら周りのスタッフさんに頭を下げる。
組まれたステージの方を見れば、三月さんや逢坂さんが中心となって、メンバー全員がスタッフリーダーさんに深々と頭を下げている様子も見えた。
「あれ?二階堂くんはまだなの?早く揃って貰えないと・・・」
息を整える七瀬さんに向かって、現場スタッフのひとりが二階堂さんはまだか?と問い詰める。
ここまでみんなが時間を押さえていたのなら、私も・・・覚悟を決めるしかないじゃん・・・
はぁぁ・・・と大きく深呼吸をして、姿勢正しく立ち、周りのスタッフへと顔を向ける。
『お、遅れて申し訳ありません!こちらの事情により、今のリハーサル・・・二階堂大和のポジションは、私が・・・佐伯 愛聖 が代役で入らせて頂きます!よろしくお願いします!』
「佐伯さんが、って、大丈夫なの?立ってるだけなら別にこっちからスタッフ出せるけど?」
『大丈夫です。私を二階堂さんだと思ってそちらのカメラワークでリハして頂いて結構ですから』
顔見知りのスタッフもいる中で、そう言ってニコリとすれば、とりあえず時間もないから早速始めようかと声が上がる。
・・・よし。
確かこの曲の二階堂さんの立ち位置は・・・と。
そこで始めて、気付く事があった。