第15章 shine of the palm
慌ただしくみんなが楽屋を出て行った後、二階堂さんが大きなため息を吐いた。
大「全く・・・こんな大事な時に。けど、こうなったのがリクじゃなくて良かったよ」
『そうですね・・・と、言いたいところですけど。無茶過ぎますよ、二階堂さん。崩れてきた資材を自分で受けるだなんて』
大「スミマセンデシタ」
『なんで棒読みなんですか?!』
大「痛ってぇ!」
紡さんが保冷剤を当てている箇所をワザとペチンと叩けば、二階堂さんの悲鳴が上がる。
『とりあえずはリハの時間を使ってギリギリまで冷やして、本番は・・・痛くてもガマンして下さい』
ふぅ・・・と息を吐きながら言えば、紡さんは神妙な顔をして最悪は辞退も・・・なんて言い出す。
『私も最悪の場合を考えたりしました。けど、二階堂さんはそれでいいんですか?』
大「だな。オレの不注意ってのもあるし、何よりアイツらが楽しみにして頑張ってきた今日なんだから、血反吐流してでもステージには立つよ」
『血反吐は後片付けが大変なので耐えて下さい』
大「突っ込み所はそこかよ・・・」
『そこしかありません』
保冷剤を新しいものに取り替えようと立ち上がると、出て行ったはずの七瀬さんが息を切らして楽屋へ戻って来る。
『七瀬さん?!なにか忘れ物でもしたんですか?!』
陸「した!忘れ物したよ!」
『何を忘れたんですか?!』
慌てて駆け寄れば、私の手を七瀬さんがグッと掴む。
陸「オレが忘れたのは、愛聖さんだよ!」
・・・は?!
陸「愛聖さん、オレたちが練習してる時ずっと見てたよね?それだけじゃなくて、三月とかオレとかのポジション移動の見本とかやってたよね?!」
『や、やってました・・・けど?』
なにを言われているのか分からずにポカンとして答えれば、七瀬さんはその私の答えを聞いて大きく頷いた。
陸「大和さん、それからマネージャー!ちょっと愛聖さん借りる!一織たちにはすぐ戻るからって言ってあるから」
『ちょっと待って下さい!私をどこに連れてくつもりなんですか?!今から七瀬さんたちはリハがあるんですよ?!』
陸「だから、そのリハに大和さんの代わりに愛聖さんを連れて行くんだよ」
・・・え?!
『えぇっ?!・・・な、ななな、なんで?!』
そんな所に私が行って、何があるの?!