第15章 shine of the palm
壮 ー いま2人とも楽屋に戻って来ていて、マネージャーと一織くんが大和さんのケガの具合いを見てるところだよ。それで、もしそっちの用事が済んでるのなら・・・ ー
『今すぐ戻ります!待ってて下さい!!』
通話を無理やり終えてポケットにスマホを押し込む。
楽「おい・・・あの眼鏡のやつ、ケガしたとか聞こえたけど」
窓際に凭れていた楽が体を起こして私の方へと歩く。
『緊急事態みたいなの!だから私戻る!話があるならまた今度ね!』
まだなにか言おうとしている楽や、私の電話での話が聞こえてしまった龍も天も心配そうな顔を向けるけど、そんなのはお構いなしでTRIGGERの楽屋のドアを開けて駆け出した。
今日のサウンドシップで歌う曲は、二階堂さんがメインボーカルになってる曲だよね?!
それなのにもし二階堂さんがステージに立てないほどのケガを負っていたとしたら・・・
こんな土壇場で楽曲の変更だなんて・・・かなり厳しい。
下手をしたら、急遽出演を取りやめにしなければならなくなるかも・・・
エレベーターのボタンを押しながらも、その時間を待つのももどかしく階段を駆け下りる。
出演辞退だなんて・・・それだけは何としても避けたい。
スカートを翻しながら走り続け、今日はヒールじゃなくてローファーで良かった・・・と思う。
ようやく見えてきたアイドリッシュセブンの楽屋のドアに飛びつくように、勢いを殺さずに突っ込みながら開けた。
『お、お待たせし・・・ゴホッゴホッ・・・』
上がりっぱなしの呼吸に負けて、話をしようとしても噎せてしまって言葉が続かない。
三「おいおい!大丈夫かよ・・・ほら、とりあえずこれ飲んで落ち着け?」
三月さんに差し出されたペットボトルの飲み物を流し込み、その華やかな香りとミルクの甘さに気持ちが和らいでいく。
『ジャスミンミルクティー・・・初めて飲んだけど、美味しい・・・じゃなくて!二階堂さんは?!』
ペットボトルを三月さんに押し渡して部屋を見渡せば、ソファーに座った二階堂さんの肩に、紡さんが保冷剤を当てていた。
『紡さん!二階堂さんのケガはどんな感じなんですか?!』
紡「それが・・・」
一「私が説明しますよ。二階堂さんの肩は、見たところ打撲だと。腕の可動域には問題なさそうですし、肩口の鬱血具合いからしても、恐らく」
『打撲・・・』