第15章 shine of the palm
なんか成り行きで着いて来ちゃったけど、私・・・どうしたらいいんだろう。
龍が閉めたドアを背にして、その場から動かずに様子を見る。
天「愛聖、そんな所で立ってないで座ったら?」
『え?あ、じゃあ・・・』
天に座れと言われて、つい、いつものお説教コースのように床にペタンと座ろうとすれば天からストップがかかる。
天「・・・なんで床?僕はソファーにって意味で言ったんだけど?」
『あ、はは・・・何となく天に言われるとお説教かな?とか思っちゃって・・・』
天「お説教?・・・されたいの?それともされなきゃいけない事でもあるの?」
『なっ、ないない!絶対ないよ!』
・・・と、思いたい。
天「じゃ、早く座ったら?それとも、この前みたいに抱き上げないと移動できないとか?」
『座る!座ります!自分で!』
とりあえずという感じでソファーに腰を下ろせば、龍が紙コップしかなくて・・・と言いながらもコーヒーを出してくれる。
龍「ちゃんと砂糖とミルクタップリで甘くしといたから」
『ありがとう、龍・・・美味しい』
軽く口をつけた場所に移ったルージュを指で拭えば、それを見て龍が私の顔をじっと見る。
龍「そうか、それだったのか!今日、いつもと違う感じがすると思ったら・・・リップいつもと違うよね?」
楽「そうか?いつもと大して変わらねぇだろ」
龍「そんな事ないと思うよ。色も艶感もいい感じじゃないか」
自分の唇を指でつついた龍が、どう?当たり?と言って笑う。
『うん、正解。実はこれ、千からプレゼントされたの。みんなも知ってると思うけど・・・私が降板することになった化粧品メーカーの・・・』
天「僕は最初から気付いてたよ。いいんじゃない?その色、愛聖に似合ってるし」
素っ気なく言いながらも、チラリと天が私を見て僅かに目を細めた。
『私としては、ちょっと冒険するカラーかな?とも思ったんだけど、龍と天にそう言われると素直に嬉しいよ』
楽「なんで俺の名前だけハブるんだよ」
天「楽はいつもと変わらないって言ったからじゃない?」
天・・・ある意味、正解。
楽「つうか、お前。男が女にルージュを贈る意味とか、分かってんのか?」
『そ、それは・・・』
天「楽だって、ちょっと前までは知らなかったクセに」
楽「うるせぇな。で、どうなんだよ」