第15章 shine of the palm
私のアイスをスプーンで軽く掬って立ち上がる。
落とさないようにしながら進み、一織さんの前に立てば、一織さんは私に行儀が悪いですよ・・・とまた呆れ始める。
でも。
一「四葉さんじゃあるまいし、食べ歩くなんていけま・・・」
『これで一織さんも同罪ですね?』
話し続ける一織さんの口にスプーンごとアイスを入れて、ニコリと笑って見せる。
環「おぉ、いおりんもアイス食ってるから共犯だな」
一「何してるんですか佐伯さん!私はさっき歯磨きを終えたと言う、の・・・に」
パッと私の手を掴んで怒り出す一織さんを見て、今度は四葉さんが自分のアイスを掬って一織さんの口へと押し込んだ。
環「いおりん、イチゴ味スゲー美味いだろ?さすが新商品だぜ。な、マリー?」
『ですね?四葉さん?一織さんはこんな時間に、しかも歯磨きをした後なのにアイスをふた口も食べちゃいましたね』
一「それは私の意志に反してです!」
『でも、食べましたよね?』
環「いおりんも食ってた」
ねー!と四葉さんと顔を合わせて言えば、一織さんは早くも諦めたのか盛大にため息を吐いた。
一「今日の所は・・・見逃しましょう。ただし、2人とも寝る前にはきちんと歯磨きを忘れないようにして下さい。アイドルと女優が虫歯で歯医者通いだなんて、洒落になりませんからね」
そう言って一織さんは廊下を歩き出す。
『一織さんも歯磨き忘れずに!ですよ?』
離れていく後ろ姿に言えば、ピタリと足を止め一織さんが振り返る。
一「ご心配なく。私は今からまた歯磨きをして来ますから・・・おやすみなさい」
ツンとまた前を向いて歩いて行く一織さんを見送って、四葉さんと笑い合う。
環「いおりんにもっと怒られると思ったけど、マリーの作戦勝ちだな」
『まぁ・・・明日また怒られそうな気もしますけど、その時はダッシュで逃げましょう』
環「だな。超ダッシュする。つか、ヤベー、アイス溶けてきた」
とろみがかってきたアイスを2人で急いで食べて、キッチンにゴミを片付けてから並んで歯磨きをする。
結果的には一織さんにバレてしまったけど、内緒でアイスを食べたのが楽しくて。
またいつか、内緒で食べましょうか?と四葉さんに提案してしまう夜だった。