第15章 shine of the palm
環「ん、アーンして」
『そ、それはちょっと抵抗が・・・』
環「なんで?バンちゃんの時とか食ってんじゃん。バンちゃんはいいのに、俺はなんでダメなの?」
そう言えば前に、万理が食べてたゼリーをそうやって貰って食べた所を四葉さんに見られた事があったけど。
それは万理だからで、昔からそんなやり取りをしてたからってのもあるからで。
環「アイス溶ける、早く」
『じゃ、じゃあ・・・頂きます・・・あ、ホントだ・・・』
口の中に広がるイチゴの香りに、思わず顔が緩む。
『四葉さん、こっちのもどうぞ?キャラメルナッツがなかなか美味しいですよ』
はい、と四葉さんが私に向けたようにスプーンで掬って差し出せば、四葉さんはなんの抵抗もなくそれをパクリと食べた。
環「おー、スゲー甘い。けど、美味い」
『でしょ?でもきっと、内緒って魅惑な言葉がアイスをもっと美味しくしてるのかも』
本当はこんな時間にアイスを食べるとか、怒られても仕方ないんだけど・・・でもこういうのって、ちょっと楽しい。
スプーンで掬ってアイスを食べながら歓談していると、またもドアがノックされて、私はその場でどうぞ?と声をかけてしまう。
一「やはりここにいましたか四葉さん。いくら隠れてこっそり食べようとして、も・・・」
ドアから顔を見せたのは、四葉さんがいま、誰よりも見つかりたくなかった人で。
その一織さんは私と四葉さんの間にあるミニテーブルに視線を落として、大きなため息までも吐いた。
一「逢坂さんや七瀬さんの所に居ないのは分かってました。そこにいなければ、きっと佐伯さんの部屋だろうと言うことも。ただ、佐伯さんまでが四葉さんとこっそりアイスを食べているとは予想外でしたけどね」
『あ、あの!これにはいろいろ訳が・・・』
環「いおりん、マリーに怒んなよ?俺が誘ったんだし」
一「どうであれ、隠れてこっそり食べていたのなら同罪です。四葉さんはまだしも、佐伯さん・・・あなたはそのカロリーが数日後に後悔する材料になるくらい分かっているでしょう?」
『はい・・・でも、私もちょっと今日は体動かしたから甘いものが欲しいなぁって思ってましたし。だから四葉さんは悪くありません』
開けっ放しの部屋の入口に寄りかかり、腕まで組んで呆れた顔をする一織さんを見て、そうだ!と思いつく。