第15章 shine of the palm
『私に?』
社長とオーディションのハシゴを終えて事務所に戻れば、万理から小さな荷物を渡される。
『誰からだろう?』
万「まぁ、送り主を見てみなって。愛聖がもの凄く知ってる人からだよ」
私がもの凄く知ってる人?
『あ、千だ』
送り主の名前を見てサラっと言えば、万理は目だけで、な?と答える。
『わざわざこんな可愛くラッピングしてあるとか、なんだろね?』
しかも、その小さな箱をふんわりと覆うようにラッピングセロファンで飾られて、送り状はその隅っこに付けられている。
『ここで開けてもいい?』
万「愛聖がそうしたいなら、いいんじゃない?」
『じゃ、開けてみる』
千からの贈り物で子供の頃から幾度となく驚かされた経験から、1人で包みを開けて中からビョーンと飛び出す仕掛けのびっくり箱だったら・・・なんて思いながら、慎重にそのリボンを解いていく。
千ってば昔、これあげるよ・・・だとか言って私に包みを開けさせ、驚く姿を見ては呼吸困難になりそうな程・・・笑い続けた事もあるし。
もし今回もそんなイタズラだったら、お返しに昼夜関係なく鬼電鳴らしまくってやる!と決意しながら箱の蓋を開くと。
『これって・・・でもどうして・・・まだ、全然発売前のはずなのに』
中には私が降板する事になったCMで使う予定だったルージュと、それに加えて発売されているカラーが2色並べて入っていた。
小「千くんからのサプライズプレゼントだね。発売前の物をさりげなく送ってくれるとか、千くんはイケメンだね」
『でも、発売前なのにどうやってこれを?』
小「それはほら、千くんが頑張ったんじゃないかな?Re:valeはキミと同じCMに出るのは決まっていたし彼らもそれを楽しみにしていたそうだから、降板せざるを得なかったキミに、誰より先に肌に乗せて欲しかったんじゃないかな?」
社長の言葉を聞きながら、手の中にあるそれに視線を落とす。
新色で追加されるカラーは5色あったけど、それが全て揃えられていて。
普段使い出来る物と、ちょっと大人っぽいカラー。
それを見るだけで、打ち合わせで見た資料の絵コンテが脳裏に浮かび、やっぱりあのCM・・・やりたかったな・・・なんて目を閉じた。
だけど今更どうなる事でもないし、降板が覆る訳でもない。