第15章 shine of the palm
百「でもそんなのダメだよ!・・・よく聞いてよユキ。もし、あの仕事をオレたちがそんな理由で降りたなんてマリーが知ったら、マリーはどう思う?元々はマリーがオーディション勝ち取ったのを知って、オレたちがそこに仕事を入れたんだよ?」
「けど、もう愛聖はその仕事が出来ない、愛聖がいないんなら、意味がない」
百「だーかーらー!そうじゃなくってさ!マリーはあの仕事決まった時、スゲー喜んでたの忘れたの?なのに、スポンサーの都合で降板になっちゃって・・・きっと悔しい思いをしたんだと思う。だからさ、ユキ?その分、オレたちが頑張れば良くない?」
「そう、ね・・・」
小さく小さく息を吐いて、ゆっくりと目を閉じて考える。
いつも・・・そうだ。
僕が冷静さに欠けて正しい判断が出来ない時、モモが一生懸命に僕を軌道修正してくれるんだ。
「愛聖の為にも、やり遂げるよ。ごめん、モモ・・・それから、ありがとう」
百「分かってくれて良かった」
岡「ホント、どうなる事かとヒヤヒヤしましたよ?」
「「 おかりん?!いつからいたの?! 」」
予期せぬ声にモモと振り返れば、いつの間にいたのか楽屋のドアに背中を預けるおかりんが立っていた。
岡「そうですねぇ・・・いつからと聞かれましたら、千くんがこの仕事降りると言い出した辺りですね、はい」
「そんな前からいたのか・・・」
いつもながら、全然気配を感じなかったよ。
岡「ただならぬ様子に声は掛けようと思いましたが、見守っちゃいました。でも、ちゃんと意見が纏まって良かったです」
キラン!と眼鏡を輝かせて、おかりんが僕たちに向き合う。
岡「実は、ですね。先日、偶然他の局で佐伯さんにお会いした時に頼まれていたんですよ」
「愛聖に頼まれた?」
百「なにを?」
おかりんに会っただなんて、ちょくちょくラビチャしていたけど聞いてないけど。
岡「佐伯さんがCM制作を降板させられた後、新しいイメージキャラクターが誰に決まっても、千くんが自分も降りるって言い出すかも知れない。だからその時は、僕になんとしてもそれを阻止して欲しい、と。佐伯さんには千くんの事がお見通しだったようですね」
「はぁ・・・そうね・・・」