第15章 shine of the palm
姉鷺さんに引き寄せられ、なし崩し的な勢いでドアの中へと踏み入ると、そこには眉を寄せた天が立っていた。
天「愛聖・・・その格好は?」
姉「この子ったら、こーんな格好のままドアの前で立ち尽くしてたのよ」
『別に、立ち尽くしてなんか・・・』
・・・そうと言われたら、そうだけど。
まさかこんな展開が待っていようとは・・・なんて思いながら顔を上げれば、龍と楽に挟まれて小さくなってる紡さんが見えて。
『あーっ!ちょっと2人とも!なんで紡さんを両挟みして座ってるの?!楽・・・まさか意地悪してるんじゃないでしょうね?!』
楽「なんで俺だけ名指しなんだよ!」
『だって龍は絶対そんな事しないって分かってるもん!』
楽「違うっての!俺はただレコード会社から差し入れされたケーキを食えって出してただけだ!」
紡「そうなんです愛聖さん!八乙女さんの仰る通りなんです」
楽「ほら見ろ!・・・って、お前はなんで裸足なんだ?どっかの原住民か?」
紡「えっ?!裸足?!」
せっかくソファーの角度からはバレないと思っていたのに、楽が大きな声を出したせいで姉鷺さんと天以外のみんなが身を乗り出して私を見る。
『これはその、紡さんが走って行ってしまった後に下岡さんと別れて楽屋には・・・戻ったんです。けど、鍵が・・・』
紡「鍵・・・・・・?あーっ!すみませんっ!私が楽屋の鍵を持ったままでした!本当にすみません!!」
勢いよくガバッと紡さんが立ち上がり、すぐに楽屋に戻りましょう!と言ったのに、それを遮るように楽がまた続ける。
楽「で?楽屋に鍵が掛かってるだけでなんで裸足なんだ?」
『紡さんの行き先は分かってるし、けどエレベーターに1人で乗るのはまだちょっと怖いかなって思って階段を使ったんだけど、最後の段でヒールが引っかかっちゃって』
天「転んだ、ってワケ?」
『まぁ、そういう感じでヒール壊れちゃったし、TRIGGERの楽屋までの距離なら裸足でも別にいいかなぁ・・・なんて。それで、ここまで来たらスリッパでも貸して貰ってとか、考えてたら姉鷺さんが。でも大丈夫!紡さん、楽屋に戻れば来る時に履いてた靴があるから戻りましょ?』
引き攣った笑いを浮かべながら回れ右をしてドアを出ようとすれば、クイッと袖を引かれてそれを阻まれる。