第15章 shine of the palm
天「行儀悪いよ」
「手付かずで残すよりはいいだろ」
チラリと目線だけ寄越した天にいいながら、それでもイチゴをひとつ摘み上げて口へと運ぶ。
即座に口の中に広がり出す甘さと香りに、さっきまで悶々としていた心が溶けていく。
その甘さを堪能していると、小さく息を吐いた天が俺と龍の顔を見る。
天「ねぇ・・・楽も龍も、あの曲で1位取って嬉しい?」
いつもより表情を見せないままの天が、そんな言葉を吐き出した。
「・・・気に入らないのか?俺は好きだぜ?」
龍「まぁ、いつもと違った感じの曲だったから、最初は照れくさかったけどね」
だよな?と龍と顔を合わせて頷いて見せる。
天「そう・・・あの曲、アイドリッシュセブンの曲と似てると思わない?」
「アイドリッシュセブンのと?」
言われてみれば、確かにあいつらは今回の俺たちの曲とよく似た感じの曲を歌ってはいるが・・・それが天は気に入らないのか?
「アイドリッシュセブン、か・・・そうだ、天。あのセンターってお前の弟なんだって?」
思い出したかの様に言えば、天の不機嫌さは更に度を増していく。
龍「そうなのか?!」
「双子だって聞いたぜ?似てないよな。向こうはこう、天真爛漫って感じだけど、こっちは・・・」
天「どうでもいい、そんな事」
「良くはないだろ。あのセンター、お前と話したがってたぞ?お前、家族なんだろ?」
天「知らない」
吐き捨てるように言った天は、それ以上この話題には関わりたくないと言った具合いに横を向いてしまう。
けど、こういう話題をほっとけないメンバーもいる訳で。
龍「天、家族に対してそういう言い方はダメだろ。弟、なんだろ?」
家族思いで弟思いの龍が、天に対して真剣な眼差しを向ける。
天「もう、弟じゃない」
「なんでお前が家族を捨てたのかって、気にしてたぜ?・・・九条、天・・・」
あからさまに天の今の名前を言えば、天はそれでも口を閉ざした。
「お前は七瀬天だった・・・お前がウチに来た時、あの親父が珍しく興奮してたんだ。九条さんから逸材を預かった、とかな・・・九条さんて、誰だよ」
天「楽には・・・関係ない」
「そうかよ」
これ以上その事に踏み込むなと言わんばかりの天に、俺も龍も・・・苦い顔しか出来なかった。
天「楽、ひとつだけハッキリ言っておくけど」