第15章 shine of the palm
不安定な片足に目をやれば、ヒールが折れてしまって靴としては機能しない状態になっていた。
なんだかツイてない、気がする。
転びはしなかったものの、これじゃ歩くのに不自由だと考えて、TRIGGERの楽屋までは人もいないし・・・と、不格好になった靴を脱いで裸足になる。
ちょっとカッコ悪いけど、TRIGGERの楽屋まで行ったらウェットティッシュ貰って足をキレイにしてからスリッパでも貸して貰って、なんとかしよう。
靴は楽屋にさえ戻れたら、局に来る時に履いてたのがあるし。
それよりも、TRIGGERの楽屋に行くのはいいとして。
こんな姿を天に見られたら皮肉のひとつでも言われそうな予感がバシバシするんだけど。
・・・考えるの、やめよ。
ドアをノックして、顔だけ覗かせて。
あとは・・・えーっと?
そうだ、こういう時は優しい龍だけ呼んで事情を説明してなんとかして貰おう!
・・・だなんて、上手くいく訳ないか。
龍だけちょっと来て?とか言ったら、勘がいい天は何かを察して様子を見に来ちゃうだろうし。
そうなると楽も来る、よね。
紡ちゃんだけを呼び戻す事も出来るんだろうけど、そうなると今度は自分の楽屋までの距離が長い。
私は裸足状態でペタペタ歩くのは仕方ないから平気だけど、そのせいで紡さんが悪く言われてしまうのは困る。
腹括って、このドアをノックするか・・・
通路を少し進んだ部屋のプレートにTRIGGERと書かれているのを見つけて立ち止まったままの思考は、漸く前に進むことを決定させた。
『よ、よし。じゃあ潔く・・・』
「あら?ちょっとアンタ、そんな所で何してるの?って、何その格好は」
はぁ・・・と大きく息を吐いて、いざノックをしようとした時、思いがけず声をかけられ肩を跳ねさせた。
『ぎゃっ・・・あ、姉鷺さん?!』
姉「ぎゃっ、じゃないわよ失礼ね!それよりどうしたのそれ!」
『これには深い訳が・・・エヘヘ・・・』
指さされた靴や足元を隠すように言えば、いいからちょっといらっしゃい!とピシャリと言われ、あれだけ迷ったドアがあっけなく開かれてしまった。