第14章 心の行方
いま離れたばかりのベッドサイドに、愛聖さんが戻って来る。
「それはさすがに・・・その、申し訳ないから・・・」
『いいんです。私も前に熱出したりした時は、多分だけど・・・側に万理がいたような気がするから』
それを聞いて、あぁ・・・あの時か、とその時の様子を思い浮かべる。
あの時は高熱で何が何だか分からなくなってる愛聖さんを一織くんがピシャリと言い聞かせて病院へ連れて行ったんだっけ。
病院で処置をして貰って帰って来てから、少しの間だけ万理さんが愛聖さんの側についていて。
三月さんに頼まれて冷やしタオルを持っていった時、万理さんが愛聖さんの手をずっと握ってたのを見て足を止めると、万理さんは・・・
万「病人にはこれが1番効くらしいよ?」
なんて穏やかに言いながら、試してみる?なんて笑ってたけど。
まさか愛聖さん、それと同じことを・・・僕に?!
・・・いや、まさか、ね。
愛聖さんと万理さんは、愛聖さんが子供の頃からの知り合いだったし、家も隣同士だったのもあっての・・・仲の良さだと思うし。
だからきっと愛聖さんは、ただ単に僕が寝付けない事を気遣って、気持ちが落ち着くまで近くにいると言っているんだろう。
『ほらほら逢坂さん、ちゃんとお布団被ってください?それから・・・はい、手はこうして・・・こう』
「っ・・・え・・・」
突然僕の手を包む温もりに、指先がピクリと動く。
『逢坂さんの手、冷たくなっちゃってるじゃないですか・・・って、あれ?手はこんなに冷たくなってるのに、なんだか顔が赤いような・・・?もしかして具合い悪くなってきちゃいました?!』
「い、いや、大丈夫・・・だよ・・・気にしないで」
そんな僕の言葉は届かず、愛聖さんが額に手を当て体温を確かめる。
『熱は・・・ないみたいですね・・・万一の為にちょっと万理呼んで来ます。今ならまだ、みんなと一緒にいると思うから』
愛聖さんが立ち上がろうと腰を上げながら、繋がれていた手をスっと離したのを感じる。
『逢坂、さん・・・?』
戸惑う気配を見せる声のトーンに顔を上げれば・・・僕の手は、愛聖さんの服を掴んでしまっていた。
「あっ・・・ご、ごめん・・・」