第14章 心の行方
「そうだね・・・いろいろな事があって、なんだか少し気持ちが昂ってしまってはいるけど、いまはこれからの為にも早く回復しないとだよね」
『そうですよ?四葉さんを誰よりちゃんと見守れるのは、逢坂さんだけなんですから』
「そんな事はないよ。大和さんや一緒にいる時間が長い一織くんの方が環くんをちゃんと見てくれてると思うし」
大和さんはアイドリッシュセブンのリーダーで。
一織くんは、環くんと学校もクラスも同じだから。
それに、愛聖さんだって・・・環くんがあれだけ懐いてるのを見れば、僕じゃなくても大丈夫なんじゃないかな?とも思う。
『逢坂さん、いいこと教えてあげます。四葉さんってね、私が寮にいるとすぐ駆け寄って来てくれて構ってくれたりするんですけど、その時に話す事って、だいたい逢坂さんの話が多いんですよ?』
「僕の?」
『今日はそーちゃんに褒められた!とか、こんなことしたらそーちゃんが怒った・・・とか、それはもう逢坂さんと四葉さんの日常パレードです。だからきっと、四葉さんは逢坂さんが大好きなんだろうなって』
環くんが・・・そんなに僕のことを話してたのか・・・
「なんだかちょっと、恥ずかしい気もするけど」
言いながらベッドに体を滑り込ませ窓の方へと視線を泳がせれば、そんな僕を見て愛聖さんがクスクスと笑う。
『だから、逢坂さんはアイドリッシュセブンにいてくれないと困りますよ?・・・ね?』
そっと布団を掛け直しながら言って、愛聖さんが立ち上がる。
『たくさん寝て、体を休めて、食べられるようになったら三月さんが作ってくれる美味しいご飯でお腹いっぱいになれば、自然と心の奥から暖かくなりますから』
「愛聖さん、三月さんの作る食事は美味しいから好きだって言ってたもんね」
僕がそう言えば、愛聖さんはニコニコとした顔を浮かべて大きく頷いた。
『じゃあ、私そろそろ行きますね?あ、部屋の明かりは消しましょうか?』
数歩歩きながら愛聖さんがスイッチのある壁をチラリと見る。
「明かりはまだそのままでいいよ。多分、そうすぐには寝付けないかと思うし・・・さっきまで賑やかだったからね」
『それもそうですね・・・それなら私、逢坂さんが寝付くまで、そばにいてあげます』